まだ高校生の僕が出会い系アプリを使ってみたら学校一の美少女とマッチングして……

あやかね

2人が出会うまで

第1話


 18禁。なんと甘美で背徳的な言葉なのだろうか。それはまさしくアダムとイブを楽園より追放せしめた原初の罪。


 異性。


 人はなぜ性が異なる者に惹かれ求めるのだろうか。


 なぜ、禁じられるのだろうか?


 この世に数億と存在する動物昆虫魚その他微生物のすべてが思うがままに行っているのである。そして、人よりも節度があるのである。


 思うに、禁じられるからこそ惹かれるのであろう。


 高校2年生の夏。僕は部屋で1人もんもんとしていた。日当たりが悪く湿度が高い我が愛しの独房は夏でも青木ヶ原樹海のような不快指数に見舞われる。しかし、クーラーの効いた部屋でありながら居心地の悪さが拭えないのは湿度のせいだけでは無かった。


「これが……大人向けの………」


 僕はスマートフォンに映し出された毒々しい桃色を見て生唾を呑み込んだ。早鐘を打つ鼓動が耳元で鳴っているかのようにうるさい。心臓がドクンと脈打つたびに体が突き上げられるようだった。


 出会い系アプリ。人は禁じられるからこそ惹かれるのであろう。


「少しやったらすぐやめる……少しやったらすぐやめる……誰かと会うなんてもってのほかだ。少しやったらすぐやめるんだ……」


 僕は震える指でアカウントを作り上げた。


 別に彼女が欲しいとか夜伽よとぎがしたいとかいうのではない。言うなれば大人の世界を経験してみたいのである。そして、その最も手近な手段がこれだったというに他ならない。


 僕は自制心だけはあるつもりだった。


 そうして、アカウントが出来上がって、いざ女性を探そうしたとき、とある項目を目にして愕然がくぜんとした。


「え、うそ! お金かかるの!?」


 どうやら女性にメッセージを送るためにはポイントを買う必要があるらしい。コンビニのプリペイドカードでも買えるだろうか……?


 出鼻をくじかれたような気分だが、女性とやり取りできなければ禁忌を犯した意味が無い。僕は3千円を財布から取り出してとぼとぼと部屋を出た。


 スマートフォンからメッセージが届いた事を知らせる通知音が鳴った。

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