No07『お姉さんとボクの、最後の夏』 さすらいのヒモ

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661288323486



まずは概要をご覧ください。


本作はタイトル通り、お姉さんと虫ガキが共に在った最後の夏を舞台にしています。

本文に触れる前に、まず概要に触れてほしいと考えたのは――この作品では概要欄を利用して「お姉さんと虫ガキが最後の夏を迎えるまでの、これまで」を示しているからです。


概要を読み、本文を読み、そして概要にもう一度立ち返ると……それぞれの文章の印象がきれいに立ち上がる。

カクヨムというプラットフォームに掲載する短編であることを利用したこの仕掛けに、まず感服しました。


さて、本文についてですが……「お姉さんはなぜ虫ガキをニコニコ眺めていたのか」、この謎に対する答えは存外シンプルであり、読み始めてすぐに理解できるものと思います。


あるいは、「なぜ?」と考えた場合に、もっとも最初に思い当たる部類の動機かもしれません。


ところが……。


さて、以下の文章では本作品の核心について触れます。


未読の方がいましたら、ぜひ本文を読了後にお読みください。




読みましたか?




読みましたね?




はい、では読んだものと判断します。


なんと――鮮やかな「叙述トリック」でしょうか!

本企画で指定されたレギュレーションはあくまで「虫ガキが登場すること」。


そう――虫ガキは、少年とは限らない。


そして、単に読者に仕掛けられただけのトリックではなく、この一つの錯誤が、物語に仕掛けられた全てのポイントを反転させていきます。


トリックと物語の有機的な融合。


一つの恋の終わりとして、唯一無二の読後感を与える作品でした。

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