講評『競作:虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎』

秋野てくと

はじめに

はじめまして。

秋野てくと、といいます。


こちらのエッセイは2023/07/30~2023/08/13まで実施されたカクヨム自主企画『競作:虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎』に参加された全作品の講評です。




主催者としてX(旧:Twitter)で告知した際に、少しでも多くの作品が来るといいな……との思いで「全作品講評します!」と宣言したのですが、結果としては多数の参加をいただき嬉しい悲鳴です。

嬉しい悲鳴……そう、悲鳴です!


まさか49作品もの講評を書くことになるなんて……!


とはいえ、いずれも力作揃い。

同じレギュレーションで書かれたとは思えないほどの多彩な作品が読むことができました。


そうそう、あらためて今回の自主企画のレギュレーションを振り返ってみましょう。


・本文は10000文字以下

・虫取りするガキが登場する

・虫取りするガキをニコニコ眺めるお姉さんが登場する

・虫取りするガキをニコニコ眺めるお姉さんはなぜ虫取りするガキをニコニコ眺めるのかについて記述があること


何故このような面妖な条件のレギュレーションなのか――。

その原因は、本自主企画のきっかけがX(旧:Twitter)で上がった「虫取りしているガキをニコニコ眺めるお姉さんがいる」という話題に由来するからです。


不思議なことに、そういったお姉さんは意外とよく見られるそうです。


保護者でもないのに、なぜニコニコと虫ガキ――虫取りにいそしむ年端もいかない少年――を眺めているのか?




この魅力的な謎を聞いたとき、真っ先に思い出したのは『五十円玉二十枚の謎』でした。


これは推理作家の若竹七海氏の実体験である「バイト先で毎週土曜日になると、50円玉20枚を握りしめて現れ、千円札への両替だけをする男」の話題を聞いた若手推理作家たちが、同席した編集者のすすめもあり「その男は何者か?」というテーマを元に競作をおこなった企画でした。

後に一般公募もされ、中でも珠玉の作品は『競作 五十円玉二十枚の謎』として単行本化することになったのです。


こういった一つの「謎」の元に複数の作家が競作をおこなう――そんな「場」を提供できたら、どんなに楽しいでしょう。


そういうわけで、今回はカクヨムにて自主企画『競作:虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎』を開催したわけでして。


しかも、今回はジャンルをミステリに限定していません。

レギュレーションで「謎」に触れることは条件にしていますが、そこを主眼に置いた作品でなくてもよいわけです。


今回の参加作品が多彩な顔ぶれになった一因はそこにあった。

終わってみた今だと、そう思います。




――前置きが長くなりました。


それでは、講評を始めましょう。

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