第11話 今日から魔法を教えます

 五歳になったラフィは、今日も剣の訓練に勤しんでいる。三歳になった誕生日の日から、屋敷の外に出れないラフィとしては暇潰しの代わりにしかならなかったが、剣技を身に着けるのはラフィに取っても有り難いことだったので必要以上に頑張った。そしてラフィには剣技の訓練を開始して直ぐに『剣技スキル』を取得したことで、密かにレベルアップを繰り返し今では指導者以上のスキルレベルになっているが、『隠蔽スキル』と『手加減スキル』を使って年相応のレベルに見せ掛けているため、今のところは誰にもバレずに済んでいる。


 そして、同じ様に始まった礼儀作法についても『礼儀作法スキル』を取得することを直ぐに思いつき取得したので、これもまた五歳児とは思えないレベルまで成長しているが、やはり『剣技スキル』と同じで人に言えることではないため、『隠蔽スキル』とか使ってなんとか一般レベルまで落としている。


 ラフィが頑張ったのは他にもあり、特に魔法については必要以上に頑張った。


『魔法制御スキル』を取得した後は、『魔力超回復スキル』『魔力量拡大スキル』などを取得し、それらを駆使しながらラフィは使用出来る魔力量を増やしていた。


 父親であるナッフィには五歳になるまでは魔法を使用することは禁止されていたが、どうしても我慢が出来なかったラフィは三歳からいろいろな魔法を試したくてしょうがなかった。


 しかし、屋敷の中では常にラフィの側にはジュリがいたので、昼間は全くといっていいほど魔法を使うことは出来なかった。だから夜になりベッドに入り寝付く前までがラフィの魔法の練習時間だった。


 でも、ベッドに入ってしまっては魔法を練習するどころではないと思うだろうが、そこはどうしても魔法を使いたいんだと強く願うラフィは考えた。


「別に魔法を行使するんじゃなく体の中の魔力を動かせばいいんだよ。うん」


 その言葉通りにラフィは魔力制御スキルを使い、体の内側に感じる魔力を動かし魔力制御スキルのレベルの底上げを頑張るのだった。だが、結局魔法を使うという目的を達成することは出来なかったが、下手に見つかって魔法の使用禁止を言い渡されるよりはマシだと思うのだった。


 そして、ラフィはやっと五歳になり、これからはやっと誰の目も気にせずに魔法を使うことが出来る。そう思いラフィは思わずニヤリとしてしまう。


 だが、そんなラフィに対し「紹介しよう。お前の魔法講師となるキリだ」とナッフィが隣に立つ美女を紹介してきた。


「キリと呼んで下さい。よろしくお願いしますねラフィ様」

「は、はい。ラフィといいます。よろしくお願いします」


 キリと名乗った女性は背が高くナッフィより少し低いくらいで痩身だが出てるところは出ているメリハリボディの持ち主だった。髪は銀色で胸元まであり、ニコリと笑っているその顔は細く小さく目も細い。だが、ラフィはそんな艶めかしい体型よりも気になっているのは、キリの顔の横で時折ピコピコと動いている長く尖った耳だった。


「ふふふ、気になります?」

「……うん」

「触りたいですよね」

「うん!」

「でも、ダメですよ」

「え? ダメなの?」

「はい。私達、エルフの耳は家族などの身内か好き合っている者にしか触らせません。ですから、ラフィ様もお気を付け下さいね」

「触っちゃダメなのは分かったけど、何に気を付ければいいの?」

「あ~それはですね……」


 ラフィはキリから忠告されたのは、人族以外の他種属では禁忌にあたる場合もあるので、触りたいと思っても先ずは先に相手に触って良いかどうかを確認するようにということだった。特に獣人族では尻尾を触るのが求婚プロポーズと受け取られる場合もあるらしい。


 ラフィはガマン強くなることを心に決めるのだった。


「では、ナッフィ様。私はいつからお教えすればよろしいので?」

「そうだな。ラフィ、お前はどうしたい?」

「はい、直ぐにでも!」

「ふふふ、だそうだぞ。キリよ」

「うふふ、余程楽しみにしていたのですね。分かりました。では、ナッフィ様裏庭をお借りしますね」

「ああ、よかろう。ラフィ、頑張るのだぞ」

「はい、父様」

「では、ラフィ様。行きましょうか」

「はい、よろしくお願いします」


 キリと共に裏庭に出るとラフィはこれから何が始まるのかとワクワクしてきたのか、キリの顔を興奮気味にジッと見る。


「うふふ、そんなに力が入りすぎていると上手くいくものも失敗してしまいますよ。もっと肩の力を抜いて下さい」

「肩……」


 力を抜けと言われてもどうすればいいのか分からなかったラフィは取り敢えず肩を解せばいいのかな両肩をぐるんぐるんと回してみる。


「うん、いい感じに抜けましたね。では、早速ですが初めましょうか」

「はい!」

「ほら、また固くなってるわよ」

「……はい」

「じゃあ、先ずは比較的安全に使える水魔法からにしましょうか。はい」

「え?」


 キリは鞄から一つのスクロールを出すとラフィに渡す。ラフィもキリが差し出して来たので、疑うこともなくそれを受け取るが、どうすればいいのか分からず。上に掲げてみたり、隙間から覗いてみたりと色々と試しているとキリは「うふふ」と笑い「開いて下さい」とラフィに言う。


「開けばいいの?」

「はい。そのスクロールを開けば、水魔法を覚えることが出来ますので」

「はい……」


 ラフィはキリに言われた通りにスクロールを広げると、そこには円が描かれていて、その中には幾何学的な模様や文字が書かれていたが、これがなんなのかをキリに確認しようとしたところで、何かが頭の中に入り込んでくる感覚に襲われる。

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