最後?の子育て、子ども等の結婚~マルスとマリーロゼの場合~




「生まれてきた子は何という名前にする?」

「……」

 赤ん坊を抱きながら私は考える。

「ヒバナ」

「おお、俺の一族には合いそうな名前だ、ヒバナお前の名前だぞ」


 ふぎゃあふぎゃあ


 赤ん坊は泣き出した。

「あ、おしめみたいね、変えないと」

 慣れた仕草でおしめを替える。

「この子も元気に育ち、幸せになりますように」

 私はそう声をかける。

「幸せになるとも」

 グレンが笑ってそう言った。



 ヒバナが生まれてから、マルス達は時間を見つけてはヒバナの様子を見に来た。

 末子になるであろう子だから、皆興味津々だ。



 ヒバナはまぁ、普通に育児は大変だったが、これが多分最後になるのかと考えると、どこか寂しくも覚えた。



 それから六年の月日が経ち──

「アルフォンス、マルスとマリーロゼは?」

「今日も熱心に勉強しているよ、ただ最近婚約以来が多数来ているんだ」

「王家の都合で結婚させたくはないから、あの子達にも自由に恋愛して欲しいですね」

「その通りですアトリア、あの子達の伴侶はあの子達に決めさせよう」

「はい」

 とか話していたら、ある日マリーロゼが──


「私、ガロウズ叔父様と結婚したいですわ」

 思わずぶーっと飲み水を拭きだした。

 アルフォンスも血を吹き出しかけてなんとか飲み干しているようだった。

「ま、マリーロゼ。いつからそう思うようになったのですか?」

「幼い頃、私に良くしてくれるガロウズ叔父様が素敵だと思ったのです、それにまだ独身みたいですし、私結婚できるようになったらガロウズ叔父様に嫁ぎたいです」

 無邪気に笑う娘を見て、私とアルフォンスは顔を見合わせてどうしよう、と言う風にするしか無かった。



 急遽ガロウズ義兄さんを呼び出して、事情を話すと、ガロウズ義兄さんは笑った。

「マリーロゼはおませだな、まぁ今の年の憧れみたいな感じだから実際結婚できる年齢になったらまた話そうぜ」

 とあっさり終わってしまった。

 本当に心代わりとかするのだろうか。



 と思いながらマルスとマリーロゼが18歳の誕生日を迎えた。

 学園に入る年になり、誕生日は盛大に祝われた。

 誕生日のパーティが終わりに近づくと、マリーロゼがガロウズ義兄さんの所に足を運んでいた。

 何か話しているようだ。

 ガロウズ義兄さんは驚いた表情を浮かべて、しばらく頭をかいて、何か言っている用だったが、諦めた表情になり何か言った。


 すると、マリーロゼは嬉々として帰ってきた。


「お父様、お母様。ガロウズ様にお父様達の許可がいただけたら婚約してもいいと許可をいただきました!」


 マジで⁈

 心代わりせーへんかったよこの子!


 どうする⁈


「……マリーロゼ、後悔はないかい」

「ありません」

「年の差もあるのだぞ」

「ダンピールですから気にしません」

「公爵家の一員となり、務める覚悟はあるか?」

「あります」

「ならば、私は文句を言うまい、マリーロゼ幸せになりなさい」

「はい!」

「ただ、婚約をべらべらしゃべってはいけないよいいね」

「分かって下ります」


 そうだ、血はつながってないけど、私の後ろ盾となっているバロウズ公爵家。

 養子扱いのそこからでた所に娘が嫁ぐのだ、色々言われる可能性がある。


「ところで、マルス。マリーロゼがガロウズ殿に恋い慕うようになったのはいつからだ? 気づいていただろう?」

「幼い頃からです」

「幼い頃……」

「正確には四歳頃でしょうか、マリーロゼはガロウズ様がいらっしゃるといつも目をキラキラとさせて近づいて話しかけてました」

「そんなに小さい頃からか……」

「はい、その時からマリーロゼは『わたしおおきくなったらガロウズさまのおよめさんになるの』言ってました」

「オウフ……」

 我が子ながら恋愛が早い。

 早熟なのか?

「それからずっとか?」

「はい、ずっとです」

 そこまで恋い慕うなど私にはできない。

 アルフォンスの血なのだろうか?

「私はまだそういう恋をしていないので学園で探して、無かったらまた考えます」

「そうか」

「そうですか……」

 マルスは私に似たのだろうか?



 そして学園に入学すると、二人はトップの成績を常に維持。

 羨望の的になった。


 それから二年後、イリアス、ロゼリア、カムイも入学した。

 この三人も特に好きな人がいないと言ってきたので学園内で良い相手が見つかればいいなと、思った。



 学園での情報はこちらに執事を通して伝えられた。

 レオンも護衛でいるので問題ない。


 私達の所はレオンの父上が護衛に来ているので。



 そして学園生活は特に波乱のない様子だったと伝えられるばかりで、私は妙な心配毎が浮かんできた。


 何か隠してないか?


 それが明らかになるのは、マルスとマリーロゼが卒業してから。


「父上、母上紹介します。私の婚約者です」

「アルト・ミンディスです……こ、国王陛下、王妃殿下、は、初めまして」

 美しいがとても気弱そうな美青年を連れてきた。

「そしてお願いがあります、母上。彼はミンディス男爵家の子ですが、侍女に無理矢理孕ませて産ませた子という事で不遇な目に遭ってきました。ですからバロウズ公爵家の養子にして後ろ盾が欲しいのです」

「分かりました、バロウズ公爵にお話をしましょう」

 と、バロウズ公爵に話をつけると──

「おーいいぜいいぜ、俺の義理の息子扱いにしよう。それがいい」

 と話はトントン拍子で進んだ。


 ちなみにそんなことをしていたミンディス男爵家は取り潰しになりました。

 悪い事はするもんじゃないね。


 慈悲を求めていたが、アルフォンスが──

「自分の欲のまま、動き、そして欲のままなぶる、そのような連中を貴族にしておいては我が国の恥だ!」

 と、一蹴してしまった。


 ミンディス男爵家の他の子はアルスをいたぶっていたという事から、婚約が決まっていた子もそれを理由に婚約破棄されてしまったそうだ。


 今は皆平民に落ちぶれてしまっている。


 侍女に子どもを産ませたのも駄目だが、その子どもを不当に扱い続けるのはもっと駄目と思った。



 アルスはことある毎に。

「私みたいな出来損ないがマルス殿下の伴侶になって済みません、済みません」

 と謝罪するが、私達はそれを言うのを辞めるようにいい、マルスに愛されたのだからそれを誇りに思って欲しいと伝え続けた。

 すると、すこしずつ誇りというか勇気がわいてきたのか、

「私はマルス殿下の伴侶です、貴方方に何を言われようと」

 と何か言われたら言い返すようになった。

 ちなみに何か言った者は厳重注意で、改善が見られない場合は……言わないでおこう。



 マルスとマリーロゼの結婚が決まり、式も盛大に挙げて。

 それから気になったのはイリアス、カムイ、ロゼリア達だった。


 伴侶を、見つけているのだろうか──






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