最悪の事態は回避~貞操とおさらば~




 客室では球体の通信水晶が光り映像を映していた。

 アードルノ国王陛下が映っている。


 ひぃいいい!


 これから何起きるの?

 私の処刑⁈

 戦々恐々しながら椅子に座らされる。

「安心しろ、アトリア」

 レイナさんが声をかけてくれるが何も安心できない。


『其方が我が息子の婚約者で他五人の婚約者でもあるアトリア・フォン・クロスレインだな』

「は、はい、そうです」

 私はガクガクブルブル震えながら答える。

『そして魔王にされそうになっている者、と』

「は、はい。その通りでございます」

『ふむ、どうしたものか……』

『貴方、そのように画面越しに圧をかけてはならないとあれほど私が申し上げたのに……』

『おお、ライラ。すまない。』

 ライラ王妃殿下もご一緒ですか。

 体の震えが止まらない。


『アトリアさん、そう気負わないで。貴方を助ける為の会議なのですから』

「わたしを?」

 寝耳に水状態だった。

『貴方の排除を進言したものもいるけど、それでは本当の解決にはなりませんわ』

『うむ、その通りだ。其方を排除すればその六人が怒りにかられ、魔王になる可能性もいなめない』

 あー言われてみるとそれも可能性としては高い。

『そこでだ』

「はい」

『其方からの情報は全て伝えて貰った、故に』


『国王として命ずる、その六人の誰とでも良いその避暑地にいる間にまぐわうといい』


 はいー⁈


『貴方!』

『ぐぉ!』

 ライラ王妃殿下が、アードルノ国王陛下を叩いた。

『もっと言い方があるでしょう!』

『しかしだな正直なところ、これが一番手っ取り早いと思うのだ、虫にかまれたとおもって我慢してくれないか』

「え、えー……」

 私は硬直する。

 自慰経験もなければ、そういう知識しかない私にどうしろと?

「父上、お言葉ながらアトリアはそういうのに恐怖心を抱いていますですので、他の方法を──」

『考えたいのはやまやまだが、ヴァイエンとかいう魔の者、ついに我が国の聖女達にも手を出そうとしてきおった』

「‼」

 ヴァイエンの野郎‼

『聖女達は皆無事だが、急を要する』

「……わかりました」

「「「「「「アトリア⁈」」」」」」

 六人が声を上げる。

「私一人の貞操が無くなるのを我慢すればいいのであれば……」

『すまぬな』

 通話が終わり、重い空気が部屋を包む。


「アトリア、本気ですか?」

「もう、国の危機まで訪れてるんです、少しでも私が魔王になる可能性は捨てたい!」

「……畏まりました、では行きましょう」

「「「「「ちょっと待った!」」」」」

 五人がアルフォンス殿下を止める。

「抜け駆けは無しとおっしゃったはずですわ!」

「そうだ言ったはずだ」

「アルフォンス殿下」

「いくら何でもずるいですわ」

「そうです」

 思わず私はレイナさんに救いを求め見たが、レイナさんはあきれ果てて──

「じゃあ六人全員でヤってこい」

「レイナさんー⁈」

 レイナさんの言葉を皮切りに、六人全員に引きずられ、あの部屋へと連れて行かれた。



 乱交という言葉があるが、あれは乱交じゃない、一対六の不健全な性行為だ‼

 乱交とは違うけど、乱交の方がマシかもしれないと思った‼



「……」

 童貞も処女も無くなってげっそりして部屋で他の五人が眠っている中寝付けない私の元にシルフィがやってきた。

『おにいちゃん、おつかれさまなの』

「おつかれさまだよほんとう……」

『でも、これでまおうかはふせげるよ、でも──』

「でも?」

『ふくしゅうしんのぞうかで、かたきをころしちゃうかもしれない』

「……」

 仇を殺す気はない。

 向こうから死んで貰うなら清々するが。


 だから、それは不味いと思った。

『あ、そうそう、ていそうなくなったのはむこうにはつたわってないから』

「ああ、そうなのか……」

『だからおかそうとしてくるけどちゅういしてね』

「わかったよ」

『うん、じゃあね』

「じゃあ」

 シルフィが消える。


 復讐心はまだ心の中に燃えている。

 それが暴走すればどうなるか分からないが、恐ろしいことになるのは間違いない。


 なんとしてでも、食い止めなくては。

 私はそう決意して目を閉じて眠った。



 翌朝──

 レイナさんに正座させられている六人が居た。

「確かにヤれとは言ったが、もう少し考えてできんのかお前ら」

「「「「「申し訳ない……」」」」」

「謝るのは私ではなく、アトリアにだろう?」

 と言ってリビングに来た私を見る。

「アトリア済まなかった、興奮して手加減できなかったのです」

「済まなかったアトリア。俺も興奮して手加減できなかった」

「済まないアトリア、任務の癖でつい」

「ごめんなさいアトリア、私も興奮しきっていて」

「ごめんなさい、アトリア。あんなの初めてだったから……」

「アトリア、ごめんなさい。興奮して何をどうしてたかすら覚えてないくらい大変なことをしたんでしょう、私」

 と、それぞれ謝る。

「当分しないでくださいよ……それくらい、私ダメージ受けましたから」

 というと、しょんぼりする六人。


 アレは快楽地獄だ。

 いや、本当。

 辞めてください、もう無理です言うほどに興奮する六人組。

 体は一つな私。

 きつかった。


「すまないな、私の発言が軽率すぎた」

 レイナさんも謝ってくれた。

「もう大丈夫ですよ……当分しないですから」

「当分っていつだちなみに」

「結婚してから十年以上経過してからです」

「「「「「「えー⁈」」」」」」

 六人が絶叫する。

「六人がかりで襲ってくるなら、です!」

 と私は付け加えてその場を後にした。


 六人がかりなら、正直二度とごめんだが、一対一なら別に文句はない。

 言わないでおく。



「アトリア、さっきの意味ってどういう⁈」

「一対一ならって言う意味です!」

「それならいつ解禁なんだ⁈」

「当分先です‼」

「どうしてなのです⁈」

「一対六の性行為でぐっでぐでになった私の体を癒やしたいんです‼」

 色々と行ってくる六人に私は言い返しながら部屋へと戻ってぐったりと横になった。


 するとセバスさんが入ってきて鍵を閉めた。

 何だろうと思うと、食事を持ってきてくれた。

「ここでゆっくりお召し上がりください。私が殿下達が入ってこないようにしますので」

「セバスさん、ありがとう……」


 ちょうど、静かに食事をしたかったので、一人静かに食事がとれて嬉しかった──





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