Episode 134 彼女のお家へ招かれて。


 ――明るい風景。気温は上昇し、早朝とは違った世界観。モノクロからカラフルに。



 喩えるならテレビの進化。白黒からカラー。写真の現像でも見たことがある。昔はというと、薬品を使っていたの、現像液。それから……椎名しいなのオジサンが語ってくれたの。


 ちょっとした昔話も折り重ね……


 三角関係も実はあったようだ。まさにまさに通ずる場面も多々ありと、私の勝手な想像も入れたり入れなかったりとね。椎名のオジサンは昔、ある女性に恋していたことも。別れたはずの恋だったけど、再び巡り合ってしまったこともあって、家族はバラバラに。


 その結果で、この物語に引き継がれた。


 巡り合ったのは初恋の相手。……でも巡り合わなければ、今の椎名家はなかったの。そのことが脳内を支配する中で、四駅から乗った電車は、レールに沿って私たちを運ぶ。


 戸中となかさんのお家は、私たちの駅より一つ手前……


 思っていたよりも近い場所だったの。私のお家とも、松近まつちかさんのお家とも。凡そ中心の位置にあった。今もまだ午前中。お昼にはもう少しの位置。ちょうど良い寒さだった。


 ――到着したようなの。


 彼女のお家、戸中家へ。古式縁な建物。まるでタイムスリップでもしたような路地裏に潜んでいるの。何となく時代劇に出てきそうな町並み。瓦の屋根がキラキラ眩かった。


 それに、ドアというよりも戸。ガラガラガラ……と音を立てながら。


 迎えたのは、お母さんというよりも、お婆ちゃん。


「お帰り」と、声を掛けた。それから、微笑ましく「珍しいのお、糸子のお友達とは。学園では上手くいってるようじゃな」とも加えて「よく来て下さった。お餅でも振る舞おうかのお、今日はめでたい日じゃからの」と、もうご機嫌もご機嫌で……私は思ったの。


 戸中さんの過去も、何処となく共通したものがあるように。


 私の過去と似たようなことがあるような。そして陸君りっくんは、バイオリンを手にしたの。


 向き合う覚悟。過去で彷徨える糸を未来へ繋げるために。そのための一歩を踏んだ。



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