第6話
俺が初めて見たトキは、もう全てを闇に
死ぬ前の人間の心は、嫌でも見えてしまう。死神とは、そういう風に出来てる。
トキは虚空を見つめていた。力を放出しながら、感情の見えない瞳。だがその心の声は、テヌートにはしっかりと届いていた。
ーーーーい、や……だ。…………嫌だ…………ッ!
「分身は、例えその時人間でも、人間とは異なる存在で、魔王様には
『ーーーーーー』
トキは、血臭にまみれた部屋に立ち尽くして、
感情のない人形の
そこに居たのは、自分を育てていた、ーーーー人間。
『ーーーー……、っ』
それに気付いた時、彼の瞳に一瞬だけ人間らしい光が
『…………ぼく、は……っ』
そして、力を使い果たしたトキは、そのまま倒れ、生き
魔王に利用され、自分の意思とは関係なく命を奪われる。そんな人間はこの世の中には山ほどいる。……彼女も、その一人だった。
トキは魔王に近い分、その呪縛から逃れる事はほぼ不可能だった。
「ーーーー俺は、あいつも助けたい。だから、トキを連れて、ここへ来た」
そこで、テヌートは
「お前なら、トキの心の
「…………わたし、が……?」
テヌートは頷く。
「百年も変わらなかったんだ。だから、十年で変わるとも思ってない。でもあいつに、光を見せてやれるのはお前しかいないと、俺は思う。だから、あいつに、お前の知る光を、教えてやってほしい」
芽依にはテヌートの正確な意図は分からない。
だから、素直に自分の意見を
「……私、トキくんに感情がないなんて、思ったこと、ないよ」
そして今度は、先程よりも強い力で芽依の頭をぐりぐりと掻き回す。
「よしよし、お前はそれで良い。……腹減ったし、飯にしよーぜ。今日はいつもより多めで頼むな、めーい!」
あまりにもぐりぐりされるので、子供扱いされていると感じた芽依は、一瞬ムカッとした顔をとると、テヌートの手を振り払った。
「……もう」
ため息をつき、立ち上がる。どこからも上から目線のテヌートを見上げ、ぷいっと顔を背けると、部屋の奥へと入っていく。
「
「はいはい」
夜空に輝く満点の星空は、あの時からちっとも変わらない。
「ーーーー……姫」
瞼の奥が震える。
目を
同時に。その笑顔が曇り、血を流して苦しげに倒れていた姿が頭から離れない。
顔をぐしゃりと歪める俺を安心させるように、彼女は無理に笑顔を作った。
重たそうな唇を開き、息も
テヌートがそれを聞いて
彼女は、更に笑みを深くする。
『ーーーーね。……約束、……だ、よ…………』
言い終わると同時に、するりと手が
『……………………っ』
もはや、言葉にならなかった。
純粋な心を持ち、ひたすら
その彼女に対する、"死"という
ーーーー
彼女は、その運命すら、赦していたけれど……、俺は、どうしても、赦せなかった。
だから、自身の剣を
そこにいた兵士達を、
……あれから二千年余り。
地獄に落ちてからも、
ーーーーテヌート、こっち!
死神の任務を他に任せて地上に降り、彼女の様子を見に行ったのは、芽依が三つの時。
彼とは全く違う、活発で
……初めは、彼女の生まれ変わりがどんな人間なのか、見てみたかっただけだった。
でも、芽依の中に彼女と同じものを感じた瞬間、彼はこの子の為に生きようって決めた。
そしてその時、彼女とは真逆の魂を持つトキに出会っていたのも、決して偶然なんかじゃない。
だからーーーー。
瞼を上げると、空には一面の星空が広がっていた。テヌートの金色の瞳が、揺るがぬ
「…………俺は、あいつらを、死んでも守り抜く。絶対に死なせない」
ーーーー姫。
これが、俺の答えだよ。
バランスの悪いその屋根に、膝を
その横に、黒い獣が出現し、影に寄り添った。
影は獣を
「……えぇ。分かっているわ。ここ、よね……」
それに
彼女は獣を
すると、
「ーーーー明日、私の計画が始まったら、お前達もお行きなさい。あの屋敷に居るものは全員、殺して
女がそう
「…………お楽しみはこれから、よね。ーーーー貴方の一番大切な人を、貴方の目の前で殺してあげる」
女は、顔を隠していたフードとローブを
月に照らされたその表情は、
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