ぼくたちとヒグマのゴンスケ
芥子川(けしかわ)
第1話
「勇者よ、頼んだぞ」
王様はオレを見据え力強く言った。
オレはデヴィマン。つい数日前まではどこにでもいる普通の一般人だったが、『神の信託』とやらで勇者に選ばれたらしい。そんなわけで、今日からオレはこの国を救うために旅に出る事になった。
ちなみにメンバーはオレを含めて4人だ。
1人目は女戦士のララ。
2人目は賢者見習いのマリー。
そして3人目は…ヒグマのゴンスケだ。
「ヒグマなんだから人じゃないだろ」というツッコミが入るだろうが、彼(オスなので)もまた『神の信託』を受けたらしい。
それを理解するために兵士数人が彼の『食事』となったわけだが…。
それはともかく、この旅の目的はこの国を襲う魔王を倒し、魔族に支配された人々を解放する事だ。
正直不安だらけだけど、とにかくやってみるしかない。
さて、まず最初に目指す街は……。
そこは一見ごく普通の村だった。
しかし、村の人達は明らかに怯えていた。
どうやらこの村は、魔王配下の魔物達に襲撃を受けて壊滅寸前だというのだ。
早速村長の家に行ってみる事にした。
そこには、傷つきながらも気丈な様子の老人がいた。
オレ達が事情を話すと、彼は語り始めた。
「連中は村から半日歩いた場所にアジトを作って、この村を襲撃してやがるんだ…動ける男たちは僅か、女子供は残らずさらわれちまったよ…」
悔しそうに拳を握りしめる村長。
すると、女戦士のララがこう提案した。
「この村に残って戦い、少しでも時間を稼ごう」と。
それにオレ達は賛成した。
心の中でゴンスケが村人に襲いかからない事を祈りながら…。
それから数日後の事。
村を襲った魔王の手下どもを倒したオレ達の元に、1人の神々しい雰囲気の少女が現れた。
彼女は自らを『女神』と名乗った。
彼女が言うには、この世界に危機が迫っているらしく、それを救うべく神として信託を行ったのだという。
「全てはあなた方にかかってま…」女神はそこまで言いかけ、それきり何も話さなかった。
腹が減ったゴンスケによって八つ裂きにされ、彼の食事となったからだ。
こうしてオレ達の新たな冒険が始まったのだが、その前に一つだけ言っておきたい事がある。
頼むからもうこれ以上犠牲者を出すんじゃない!
だが、ゴンスケも『神の信託』によりオレたちに同行しており、加えて王が大事に育てたヒグマなのだ。
無下に扱うわけには行かない。
そこでオレたちは考えた末、彼を改めて仲間として受け入れる事に決めた。
……いや、受け入れざるを得なかったと言った方が正しいか。
何にせよ、今度こそ本当の意味での冒険が始まるようだ。
ちなみに村人は魔物たちの手を煩わせる事無く、ゴンスケの食事になった。
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