仰向け

「はい、コロンとあおむけになって」

 

 ゆっくりと、ベヒーシートの上にしゃがまされる。お尻を床につかせて足をのばす。


 ――グジュウゥゥゥ……


 本日四度目……ただし、さきほど再補充された本日最多量のおしっこのくぐもった音が、おむつカバーの中から聞こえてくる。

 圧力でたくさんの液体がおむつからしみ出してきた。

 

「あぁ…………いやァ……」

 

 おむつと肌のはざまで、オシッコが所在なげにうごめくおぞましさに、顔をゆがめる。

 

「お母さん、ちょっとだけ我慢してね。

 それじゃぁ、お願いします」

 

 リサは右手で私の手を握る。

 すると、年長の子らが体を押し仰向けに寝かしつけスカート背部をたくし上げた。

 

「こうしないと、オムツはずした時スカートよごしちゃうからね」

 

 今度はサッとスカートの前を胸のあたりまで跳ね上げる。

 

「あっ、ダメっ…………」

 

 あわててスカートを押さえようとした。

 だが元が超ミニ、いや無意味スカートと化していたこともあり、簡単にまくられてしまう。

 なんとか隠れていた上四分の一ほども見える状態になる。

 

 ふと、私の周囲を回るように移動する足音が聞こえた。

 

 その音にハッとして見まわすと、カメラを持った、多分先生であろう人が間近から私を撮っていた。

 

「いやよ、いやっ。

 撮らないで!」

 

 仰向けのまま叫んだ。


「入園式の出来事は全て記録し、後日ネット上で公開するのです。

 実際に起きたことを、隠すなどということは出来ません」

 

「そっ、そんな!

 いやです!

 いやぁぁ…………!」

 

 すっかり動転し、両手でむき出しにされたオムツを覆い隠そうとした。

 だが、右手はリサが握っている。

 

「裕子ちゃん、邪魔でしょ。

 お手てはバンザイでちゅ。

 ほら、リサちゃん」

 

「はーい」


 幼児をあやすような口調で両手をオムツから引き離す。

 左手もリサに握らせた。

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