第9話 哲学者の結論

哲学者の結論

                      エミリー・ブロンテ作

                           額田河合訳


思索はもうたくさんだ、哲学者くん

あまりに長いことおまえは夢見てきた

光明もなく、このうらぶれた部屋で

外では夏の陽ざしが輝いているというのに――

果てしなくさまよう魂よ、どんな悲しい繰り返しが

またもやおまえの思案の結論となるのか?


「おお、時よ来いはやく、私が水遠に眠り

 私が私でなくなる時よ

 雨がどんなに私をずぶぬれにしようとも

 雪がどんなに私に降り積もろうと気づくこともない時


 未来に約束された天国も、この狂おしい欲望の

 すべて、いや半分さえ満たしえない

 やむことなく炎の燃えさかる地獄への恐怖も

 このやむことない意志を抑えることはできない!」


――かつて私はそう言ったし、今も同じ言葉をくり返す

――死を迎える時まで私は言い続けることだろう――

三人の神たちがこの小さな体の中で

夜も昼も争い続けている


天でさえ彼らすべてを相容れえなかった、それなのになお

被らすべては私の中にある

そしてきっと私のものであり続けるに違いない、私が

私そのものを忘れてしまわぬ限り


おお、私の胸の中の

彼らの戦いが終わる時が来れば

おお、私に安息がもたらされ

もはや二度と苦しむことのない日が来れば


「私は一人の精霊が立っているのを見た。人間よ

 おまえががまさしく立っているそこに――一時間前だ

 その足もとをめぐって三つの川が流れていた

 同じ深さ、同じ流れの――


 ひとつは金色の流れ、ひとつは血のような

 もうひとつはサファイアのように そう見えた

 けれど、その三つの流れはひとつに集まると

 墨のように真っ黒な海になだれ込むのだった


 精霊は身を乗り出すとその燃えるような眼差しを

 その広大な海の真っ暗な夜に注いだ

 そして――突然の炎ですべてを燃えたたせた

 喜びに満ちた海ははるが遠くまでまばゆくきらめいた――

 太陽のようにまっ白で、はるかに、はるかに、美しかった

 もととなった三つの流れよりずっとはるかに」


――まさしくその精霊を、予言者よ

私は生涯をかけて求めてきたのだ

天国に、地獄に、大地に、そして空に

果でしない探求――そしていつも間違っていた


たった一度でいい、その輝かしいまなざしが

私の目にのしかかるこの雲を明るくするのを見てさえいたなら

こんな瞳病な叫びをあげることはなかったろう

考えることをやめたい、存在することをやめたいなどとは――


忘却という祝福を顧うことなど断じてありえなかったし

「死」に思慕の手を差しのべて

この世を感じられる魂、生きている呼吸とひきかえに

死という名の休息を求めることもなかったろう


おお.私を死なせてくれ、力と息志とが

その血みどろの戦いを終えるように

敗北した善も、語ち誇る悪も

ひとつの安らぎのなかに消えゆくように

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