第十二部
翌朝。
「お師匠様、今日の修行は?」
「今日の修行はなしだ。貴様ならどんな修行もこなそう。半端な修行は意味をなさない」
「え、じゃあ何すんの?」
「王都に出てみようと思う」
「えー、また王都に行くのかよ……」
「何を言う、今日は一人ではないぞ。我も同行する」
「お、やっと引きこもりをやめるつもりになったのか」
「……うるさい。そろそろ我自ら動き出さねばなるまい。王都と戦争する日も遠くなかろう。言っておくが、我は断じて引きこもりではない。行くぞ、ナナシよ」
「はいはい」
昨日と同じく馬車に乗り込み、屋敷を出発する。
久しぶりに屋敷を出るせいか、ソルシエルはそわそわして落ち着かないようだった。
「よいか、決して我らが魔女と悟られてはならぬ。我らは姉妹で異国から観光に来たという設定にしておこう」
「わかってる。でも、そんないかにも魔女ですって感じの帽子かぶってたらすぐバレちゃうんじゃ?」
「ふむ、それならこうしよう」
ソルシエルが帽子を脱ぐと、それは一瞬にして髪留めへと変身した。
黒髪を結い上げたら魔女としての威厳が和らぎ、人間らしく淑女らしく若返ったような気がする。
悠久の時を生きようとも変わらない、魔女の神秘――そして、変わることのない人間の本質が感じられた。
しばらくして、馬車は王都で歩みを止めた。
「さて、手始めに市場から見て回るか」
「やめといた方がいいぜ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます