壮年期 27
ーーーー
「…貴殿らが猟兵隊の者か?」
…日が沈み出した夕方になるとようやく帰って来たのか子爵であろうおっさんがやって来た。
「はい。後は自分達が引き継ぎますので、兵を休めた後に自国へとお戻りください」
「…ありがたい。クライン辺境伯はどこに居る?戻る前に一言挨拶ぐらいはしておきたいものだが…」
「あ、自分です」
「…なに?」
分身の俺が交代を告げるとおっさんは安堵するかのように息を吐き、尋ねた後に理由を話すので少し手を上げながら答えると不思議そうな顔になる。
「自分が猟兵隊の団長でもあるクライン辺境伯です」
「…なんだと…?本当なのか?」
「ああ」「はい」
「…知らぬ事とはいえ失礼を。お初お目にかかります、クライン辺境伯。私はガリー子爵家の当主『ダリフラウ・ガリー』と申します」
分身の俺の簡単な自己紹介におっさんは分身の二人を見ながら確認し、二人が肯定すると地面に片膝をついて少し頭を下げながら軽く謝罪して自己紹介を始める。
「以後よろしくお願いします。早速ですが…今の状況は悪…あまりよろしくないので、早期に帰国した方がよろしいかと」
「これはご冗談を。辺境伯と猟兵隊が来たのであれば決着までそう時間はかかりますまい」
分身の俺が社交辞令のように挨拶を返し、言い直して言葉を選びながら警告するように言うもおっさんは笑って分身の俺らに期待してるように返す。
「残念ですが、今この国にいる猟兵隊は我々三人だけです」
「…そ、それは…どういう…?」
「我々三人だけの少数の方が速く移動でき、更に兵さえ借り受ける事が出来れば指揮官だけで十分だという考えでした」
「な、なるほど…?」
分身の俺の否定におっさんは困惑したような反応を見せ、分身の俺が三人しか来てない理由を話すと微妙な…本当に理解してるのか分からない感じで納得した。
「なのでニャルガッズの時のようにこの国に着いて直ぐに兵を貸して欲しい、と頼みに行ったのですが…予想外に協力を断られてしまいました」
「それは…アーデンの今の状況を考える限り、妥当な判断では無いのか?」
分身の俺が冗談を言うような軽さで報告するとおっさんは軽く困惑しながらこの国の判断に同意するように言う。
「そうですね。しかし自分達三人だけでは現状どうにもならないと思いますので、大変な事態に陥る前に子爵達には一刻も早く退避…いえ、帰国してもらいたい」
分身の俺は適当な感じで肯定した後に真面目に脅すような言葉選びや言い直しをして指示を出すと…
「…了承した。兵を少し休ませたのち、直ぐに帰還準備へと移ろう」
おっさんは危機感を持った顔で頷き、従うように行動の予定を告げる。
…翌日。
子爵は野営地を急いで撤去させると昼前には帰還して行った。
「…2000名近くの兵を連れて来たらしいけど…どこまで成果を残せたんだろうね?」
「多少時間を稼ぐぐらいの働きはしたと思いますけど…」
「正直言えばあまり戦況に影響があったとは思えないね」
分身の俺が帰還した子爵達の働きについて言及すると分身のお姉さんは困ったように呟き、分身の女性も困ったような顔をしながらもスパッと返す。
「まあ兵の損害を抑えるのが最優先だからそんな前がかりで攻めるような事はしないだろうし」
「大軍を引き連れて来るには遠過ぎますから…それでも2000名の兵を連れて来られたのも凄い事ですが」
「多分ロマズスル辺境伯のところから兵を借りたんじゃないかい?流石に全て自領の兵だと豪放すぎる」
分身の俺の想定に分身のお姉さんが子爵を評価するように言うと分身の女性が予想を告げる。
「とりあえず戦場にでも行ってくるかな。参加はしないけど」
「そうだね。上から全体を見るだけじゃ分からない事もある…現場の空気を実際に感じた方が良い」
「もしかしたら後から兵権を譲渡される可能性もありますからね」
宿営地でずっと待機しとくのも暇だし周りの兵に何を言われるか分かったものじゃないので、分身の俺が暇つぶしに視察に行こうとすると分身の二人も賛同してついて来るようだ。
なので馬を三頭借りて三人で戦場へと向かった。
「…あー、やっぱ押されてるなぁ…」
「兵数が同数でコレなら作戦の差、だろうね」
「…こちら側は特におかしな陣形だったり変わった動きをしてるとは思えないですが…」
分身の俺が馬の上に立って戦場を見ながら報告すると分身の女性は形勢が不利になっている理由を予想し、分身のお姉さんは不思議そうに返す。
「それなら相手の方が一枚上手、って事かな?」
「…全体の動きや流れを把握出来てない今はあたしからしたら何も言えないかな。士気の差もあるかもしれないし」
「他のところはどうなってるんだろ? 」
分身の俺の予想に分身の女性はノーコメントのように返すので分身の俺は右翼や左翼に展開してる戦場へと移動する事に。
「…なんか部隊がちょこまか動いてる感じがする」
「もしかしたら指揮官が全体を見渡せる奴で、逐次指示を出しながら有利な形勢を作り出してるのかも」
「…だとしたら基本に忠実なやり方だとジリ貧か…まあこのままだと相手も一気には勝負を決められないから時間稼ぎ的にはなるけど…」
移動しながら敵軍の動きを観察した感想を話すと分身の女性が予想と想定を言い、分身の俺はこの戦いでの勝ち目が薄い事を察して呟く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます