青年期 317

…その後。



青年が戻って行って約20分後ぐらいには敵の部隊に動きがあり…



どうやら分身の俺が交渉に行くまでもなく撤退するようだ。



「結局俺が行くまでも無かったか…」



分身の俺はどうせ撤退すんのならもっと早く判断しろよ、と思いながら呟く。



「よし。他の部隊の状況を確認だ!」


「交戦が続くようであれば我々が援軍として向かい、直々に叩き潰す」


「「「はっ!」」」



男や男性が指示を出すと部下の兵士達が了承して慌ただしく動き始める。



「もう俺は要らないだろうから戻っても良い?」


「ちょっと待て。戻るならついでに報告書を提出しろ。あと5分もあれば書き終わる」


「はいはい」



分身の俺の確認に男は制止した後にパシるような事を言い出すので分身の俺は少し待つ事に。



「…この報告書も持って行ってくれ」


「はいよ」



すると男性も封筒を差し出し、分身の俺は受け取った後に男からも封筒を受け取って将軍であるおじさんの所へと戻った。




「…おはようございます」


「…む。団長殿が帰還したと言う事は…」



…騎士に案内されて昨日とは違うおじさんの自室の部屋に通されたので挨拶するとおじさんは書類から目を離して予想を呟く。



「いつものように一騎打ちに持ち込んで勝利し、敵の主力部隊を撤退させました」


「なんと!昨日の今日でか!?」


「あとコレ報告書らしいです」



分身の俺の簡単な報告におじさんが驚きながら確認してくるが分身の俺はスルーして男や男性から預かった封筒を渡す。




「…なるほど。詳細は後から読むとして…団長殿の発言を疑っていたわけでは無いが、本当に敵は撤退準備に入ったようだな」


「俺がココに来る前には既に行動に移してましたよ」



おじさんは封筒の中の書類を流し読みするような感じで見た後に納得したような反応を示し、分身の俺が補足を入れるように追加情報を告げる。



「…一騎打ちの相手はどの程度の強さだったのだ?」


「めちゃくちゃ強かったです。手練も手練…今まで戦った相手の中でも上位に入るほどでした」



まあ一応相性の問題で上には上が居ますが。と、分身の俺はおじさんの好奇心からの問いに青年の評価を話して念のための補足を付け足す。



「ほう?あの部隊も中々に手練の集まりなのだが…そう言えば団長殿は隊長であるあの二人とも一騎打ちをした経験があると聞く。その二人と比べても見劣りしないほどなのか?」


「…うーん…あくまで自分の個人的な意見でしかありませんが…率直な感想を告げると、二人同時でも相手になるか分からないです」


「『二人同時でも』だと?」


「はい。心構えに差がありすぎて間違いなくどちらか一人は開始直後に殺されると思います」



意外そうなおじさんの確認に分身の俺は返答に困りながら予防線を張るように前置きを話すとおじさんが驚いたように聞き、分身の俺は肯定して想定を告げた。



「それほどまでに…!」


「ただ、今の想定はあくまで『一騎打ち』…正面から戦った場合、という前提ありきの話になりますので…戦場においての戦いであればまた話は変わってきます」


「…なるほど」



驚くおじさんに分身の俺がそう伝えるとおじさんは理解したかのように納得する。



「まあ戦場での不意打ちありで考えるとおそらく相性の差が無くなり、厄介さは増すので確実に勝てる相手は片手よりも少なくなると思います」


「…そうか。しかし不確定ではあるがその者に勝てる者も増えるという事だろう?」


「はい。戦場であればあの二人でも十分勝負にはなるでしょう」



分身の俺が青年に有利な想定をしながら話すとおじさんは可能性の確認をするので分身の俺は勝率は低いがな…と思いながらも肯定した。



「…しかしそれほどの実力者ともなれば今の私では遅れを取るかもしれんな…」


「自分の予想では五分と五分…といったところでしょうか。相手は一撃必殺に全てをかけていましたので、もしかしたら腕一本で済むかもしれません」



おじさんの予想に分身の俺は老獪さを考慮して、犠牲を惜しまなければ運次第で結果はどちらにも傾く…的な返答をする。



「ふむ…捨て身の相手にはこちらも捨て身にならねば分が悪いか。…確かに経験の浅い彼らでは対応する前に殺されるかもしれん」


「まあ自分でなければ一騎打ちにはならなかったかもしれませんし、個人の武で劣っていようが部隊の指揮戦術で勝てば良いだけですから」


「ははは!その通りだ。やはり団長殿は戦いについて広く深い理解をもっているようだな」



おじさんが理解して納得したように呟き、分身の俺が今までの話を台無しにするかのように言うとおじさんは笑いながら同意して褒めてきた。



「ありがとうございます」


「しかし、今回も大変助けられてしまったな。まさかわずか一日で解決してくれるとは…」


「一日で終わったのはあの部隊の隊長である彼らの働きのおかげでもありますよ。有能なので自分の考えを察して直ぐに援護してくれましたし」



分身の俺のお礼におじさんは申し訳なさそうな顔で呟くので分身の俺は男や男性にも手柄を譲るように返す。



「…そうか。とりあえず報酬を用意しよう」


「ありがとうございます」



おじさんが安心した様子を見せると金をくれるらしく、断るとかのやり取りで長引くのも面倒なので分身の俺は素直に受け取る事にしてお礼を言う。

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