青年期 239
…町に戻り、中継基地にメテオダイブを決めての翌日。
分身の俺は帝国の大将に降伏勧告をするため、帝国が占拠してる町へと一人で出向いた。
「…ん?なんだお前は?」
「もしかして大公国の奴か?」
「…まあね。使者ってやつ」
門の前に立って警備をしていた兵士が分身の俺を見ながら警戒した様子で確認するように尋ね、分身の俺は素性がバレてない事に微妙な気持ちになりながら答える。
「使者だと?帰れ帰れ。町に入ったら命があるかどうかも分からんぞ」
「この侵攻を指揮してる大将…司令官とかはココにいる?」
敵兵の一人は優しさからか手を振って門前払いするように言うので分身の俺は目的の人物が居るかどうかを尋ねた。
「こんな前線の町に居るわけないだろう」
「アズマ様がいるとしたら港の拠点かその近くの町だろうが…ま、お前には関係ない事だ。さっさと帰らんと捕まえるぞ」
兵士の一人が呆れたように否定するとあと一人が居場所を予想するように呟き…追い払うようなポーズをした後に脅しをかけてくる。
「はいはい。お邪魔しました…お仕事ご苦労さん」
分身の俺は労いの言葉をかけてその場は大人しく引き下がるように取り戻した町の方向に向かって歩く。
「…総大将が前線に居ないから兵の士気もイマイチな上に動きも遅いのか…ま、ありがたい事だ」
町が見えなくなった所で分身の俺は独り言を呟いて変化魔法を使い、ドラゴンに変身して帝国が作った海岸の拠点へと向かう。
ーーーー
「おい!止まれ!」
「ん?」
「貴様、何用だ?ココはロンゴニア帝国の宿営地だぞ」
分身の俺が拠点に近づくと巡回警備中の兵士に発見され、警戒した様子で剣の柄に手を当てながら用件を尋ねてきた。
「えーと…その前に確認したい事があるんだけど、帝国側の司令官ってアズマって人だよね?」
「いかにも。本作戦の最高司令官はあのアズマ中将である」
「あ、じゃあその人に会わせてくれない?知り合いなんだ」
「…なんだと…?」
分身の俺の確認に兵士が何故か誇らしげに答え、分身の俺が嘘を吐いてお願いすると兵士は怪訝そうな目を向ける。
「怪しむのは当然。でも今朝、魔法協会側に中継基地の三つ目を潰されたんだから急がないと手遅れになるよ?まあソレで手痛い反撃にあって失脚してくれた方が面白いんだけど」
部下としてこきつかえるようになるし…と、分身の俺は適当な嘘を堂々と自信満々に言ってニヤリと笑う。
「…!アズマ中将は今、シャルドルの町に滞在しておられます」
「シャルドルって…前線には出ないのか…相変わらず悪い癖だ、現場に居ないと即応出来ないと言うのに…」
「…敵の大公国側がどのような手段を講じてくるか分からない以上、アズマ中将が狙われる危険を減らすためであります」
兵士が勘違いして敵の大将の居場所を教えてくれ、話に合わせるようにそれっぽいことをため息混じりで呟くと兵士は若干困ったように理由を話す。
「ははは、なるほどね。ありがとう、では我ら帝国の勝利という吉報を待っててくれ」
「はっ!」
分身の俺は臆病者め、と思いながら笑ってお礼を言うとそれっぽい事を告げて手を振って町に向かうと兵士が敬礼して見送った。
…そして兵士や拠点が完全に見えなくなった所で分身の俺は変化魔法を使って部分変化で脚をカースホースの脚力に変え、走って目的の町へと向かう。
「おーい!おーい!大変だー!」
「…ん?」
「…なんだ…?」
目的の町に近づき、兵士の姿が見えたところで変化魔法を解除し…
分身の俺は先手を打って手を振りながら兵士達の下へと駆け寄る。
「またやられたらしい!魔法協会の奴ら、また中継地点を狙った!これで三度目だ!アズマ中将に報告を!」
「なんだと!?」
「またか!」
「早く対策を取って貰わないと他も危ない!急いでアズマ中将に会わせてくれ!」
「分かった!少し待ってろ!」
分身の俺が慌てる演技をしながら報告すると集まって来た兵士達が驚き、分身の俺の催促に兵士達は身分を尋ねる事なく門を開けて町に入れてくれた。
「アズマ中将は今どこに?」
「ん?どうした?なんだそいつは?」
「またやられたんだ。魔法協会の奴らに…これで三度目…他の中継地点が狙われるのも時間の問題だ」
「…なんだって?本当か!?」
ついて来た兵士の問いに街中を巡回中の兵士は分身の俺を見て怪訝そうに警戒するような様子を見せたが、分身の俺が報告するように言うと驚きながら確認してくる。
「ココにはまだ報告は来てないのか?宿営地の方には夜明け頃には来てたらしいが…」
「いや、そんな話は聞いていないが…」
「じゃあ尚更早くアズマ中将に報告して対策を立てて貰わないと!ぐずぐずしてると魔法協会の奴らがいつ他の場所を標的にするか…!」
分身の俺が確認するように聞くと兵士は困惑したように返し、分身の俺は判断力を奪うために慌てさせて急かすように言う。
「そ、そうだな、分かった!中将なら確か…」
…ソレが功を奏して兵士は焦ったように敵の大将の下へと案内してくれた。
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