青年期 237

…それから二日後。



大体分身の俺の予想通り帝国の軍勢が最終防衛線まで攻め込んで来た。



「…さて、と」



…帝国の軍勢、約5万余りが目の前まで迫って来ているので…



分身の俺は戦いが始まる前にいつものように名乗りを上げるため一人で敵陣へと近づく。



「…やーやー!我こそはラスタの猟兵隊の団長である!前線司令官なるぞ!敵大将に告ぐ!今からでも遅くはない!悪辣非道ななんでもありをやめて正々堂々と我の一騎打ちを受けるか、この大公国から退却せよ!繰り返す!今からでも遅くはない!次の機会があるかどうかは分からんぞ!賢明な判断を求む!」



…変化魔法を使ってセイレーンの喉に部分変化させた後に大声で名乗りを上げ、一騎打ちの申し出と降伏勧告をする。



が、やはり返事はなく…今回は少し長めの10分待ったが帝国側は何の反応も示さなかったので味方の所へと戻る事に。



「んじゃ、後は作戦通りにやろうか」


「ああ」



…分身の俺は味方の所へ戻った後にとりあえず帝国側がある程度の距離に近づいて来るまで待機した。






ーーーー






「…よし!今だ!」


「魔法発動!」


「魔法を発動させる!」



帝国の軍勢が目の前に迫って来るまで引きつけ、敵の射程に入る前に合図を出して風魔法の使い手達に魔法を発動してもらう。



「弓兵の矢に魔法強化を!」


「矢に魔法をかけて強化しろ!」


「魔法強化を行う!」



そして魔法協会の魔法使い達が主導して弓兵達が構えている矢に魔法での強化をかけ、弓兵達はその矢を敵陣に向けて放つ。



すると帝国の軍勢は慌てながら退いていった。



「…これでそう簡単には攻めて来れなくなっただろうよ…」


「こちら側が追い風で敵が逆風になるように強風を吹かせるなんて流石だね。おかげで矢の範囲が広がって敵も迂闊には近づけなくなる」



…その様子を見て分身の俺が敵の行動を想定して呟くと分身の女性が喜びながら褒めてくる。



「…じゃ、ココは先生とお姉さんに任せたよ?俺は次の作戦に移るから」


「分かりました」


「ああ、任せな」



敵が退却して一旦離れて行ったとはいえ、もしかしたら予想外の事をやらかしてくるかもしれないので…



万が一に備えて現場の指揮を分身の女性とお姉さんに任せ、分身の俺は別動隊を率いて動く事に。



…その夕方。



夜襲対策の一つとして氷魔法と風魔法、火魔法で辺りの大気を不安定にして雨雲を作って雨を降らせた。



そして分身の俺は変化魔法でドラゴンに変身し、標的の町の近くを飛び回りながらマーメイドの技を使って広範囲に霧を発生させる。



…その霧に乗じて分身の俺が5000名の騎兵による別働隊を率いて帝国が設営した町や村の拠点の間にある中継基地へと夜の闇と霧に紛れながら襲撃に向かう。



「…止まってくれ。俺が一旦様子を見に行くからちょっと待ってて」


「分かりました」


「お気をつけて」



…辺りが真っ暗になった頃に分身の俺と別動隊が敵の中継基地の近くに着いたので兵達をその場で待機させ、分身の俺一人で中継基地に近づく。



「…よし、オッケー。行こう」


「行くぞ」


「襲撃するぞ」


「抵抗する者に容赦はするな」



分身の俺が変化魔法を使ってセイレーンの技で中継基地内にいる兵士達を強制的に眠らせた後に味方の兵の元へと戻って合図を出し、敵兵の拘束と物資の奪取を開始する。



…それから一時間もする頃には作業が終了したので別動隊を二つに分け、その半数の兵達に奪った物資や拘束した敵兵達を預けて帰還させた。



そして分身の俺は残した半数の兵と共に別の狙いを定めた中継基地へと向かい…



同じ方法で中継基地内の物資を奪って敵兵を拘束し、分身の俺らも帰還する。



「…予想以上に時間がかかったな…まあいいか」



…味方の陣営へと着く頃にはまだ辺りは暗いがもう早朝といっても差し支えないぐらいの時間になっており…少し反省するように呟いた後に、直ぐに気持ちを切り替えた。



「…さて、と…辺りが明るくなる前に…」



…もう標的の中継基地には物資も兵も存在せず、気兼ねなくメテオダイブを使える状況になったので…



分身の俺は変化魔法を使って分身を三体増やした後に一体解除し、残した二体の分身にメテオダイブを敢行して来てもらう事に。



「まさかメテオダイブを使う事になるとは…」

「全くだな。でも使うとどうなるか楽しみじゃね?」

「「確かに」」



分身の俺の呟きに分身の俺が同意してワクワクしながら返すと分身の俺らの言葉が当然被る。



「「…じゃあ行って来るわ」」

「おう」



…時間的な余裕があまり無いので分身の俺らは直ぐに行動に移す事にして変化魔法でドラゴンに変身し、分身の俺が飛び立つ分身の俺らを見送った。



「…ここまで来れば…」



…成層圏近くまで飛び上がった分身の俺は一旦ホバリングして見下ろしながら目的地を確認する。



「…いやっほーう!!」



そのあとにワイバーンの技を使い…全力で急降下しながら炎を吐いて全身に纏う。



「…がふっ!」



そして目的の中継基地のど真ん中にボディプレスをかますと…



まさに隕石が落ちたみたいな感じで落下地点とその周りが衝撃でえらいことに…大惨事みたいな状況になったのを見て分身の俺は分身を解除した。

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