青年期 229
…城の中に入り、分身のお姉さんが受付で身分を照会すると直ぐに魔法協会のトップである『代表者』の居る部屋へと案内された。
「…失礼します」
案内役の男が部屋のドアをノックした後に挨拶して入るので分身の俺らも後に続いて入ると…
部屋の中には十代の前半から中盤…分身のお姉さんの外見年齢と近い少女が立っている。
「…丁度良い時に来て下さいましたね、クライン大魔導師。そしてラグィーズ協会員も。協会の危機に立ち向かうために一緒に頑張りましょう」
「「「はい」」」
少女はにこやかに笑うと感謝の意を示すように軽く頭を下げながら言い、分身のお姉さんと女性…案内役の男が同時に返事をした。
「おや、そちらの方は?もしかして初めてお会いする方ですか?」
「えーと…」
「まあ良いでしょう。案内ご苦労でしたね」
「はい。では失礼します」
少女が分身の俺を見ながら不思議そうに尋ねると分身のお姉さんはどう説明しようと困った感じで呟き、少女は気を利かせたように人払いをする。
「…では改めて…そのお方は?」
「秘匿事項です」
「…!?では、この方が…あの…!」
案内役の男が居なくなったところで少し間を置いて少女が再び尋ね、分身のお姉さんの返答に少女は分身の俺を見ながら驚愕した。
「…リデック・ゼルハイト様、いつもお世話になっております。私は魔法協会の当代代表者の座に就いております『アンネリーゼ・マーリン』と申します、以後よろしくお願いいたします」
「あ、うん…なんか若くない…?」
少女は床に片膝を着いて自己紹介を始め、分身の俺は役職と見た目に違和感を感じて分身のお姉さんにコソコソと小声で聞く。
「一度若返ってますので」
「やっぱり?」
「マーリン様は協会員として最年長だからね。150を超えてるって話だよ」
「そんなに!?…こんな美少女のロリババアって…」
分身のお姉さんの返答に納得すると分身の女性が笑いながら話し、分身の俺は予想外の年齢に驚きながら少女を見る。
「…ん?って事は何年組織のトップやってんの?」
「今回はまだ10年ぐらいです。私は他に代表者の条件を満たす者が居ない場合の代行みたいなものですので」
「へー」
「前回は確か50年ぐらい代表者をやられていたんですよね?」
分身の俺がふとした疑問を尋ねると少女が答えて説明し、分身のお姉さんは確認するように聞いた。
「いえ、44年です。まだ90代の頃でしたので、もう60年ほど前の話になりますが」
「じゃあ意外と代表者の条件って厳しいんだ?」
「…そうですね。世界的な組織であるこの『魔法協会』を背負って立つほどの人材はそうそう居ないので…」
「それもそうだ」
少女の訂正に分身の俺が確認すると少女は少し考えて肯定するように返し、分身の俺も同意するように相槌を打つ。
「坊ちゃんなら条件を満たしているので代表者になれると思いますよ。魔法協会に所属すれば…ですけど」
「そうだね。カリスマもあるし、あんたなら直ぐに組織のトップに立てると思う」
分身のお姉さんは俺を候補に立てるように笑いながら言い、分身の女性も笑って同意する。
「いやー…面倒くさいから別にいいかな…そもそも魔法協会の事とかあんまり知らないし」
「…一国の王よりも権力や影響力の強い立場をこうもアッサリと断るとは…報告通りの器の大きさですね」
分身の俺が遠慮して断ると少女は驚きながら呟いて何故か分身の俺を褒めてきた。
「…器の大きさとか関係ある?と言うか俺がなりたいと言ってもそう簡単になれるものじゃないでしょ?」
「ゼルハイト様なら功績の一点だけで既に過去の誰よりも抜きん出ていますし、なによりクライン大魔導師の推薦とあれば反対する者は居ないでしょう」
強く望むのならば週明けには『代表者』の座に就く事も可能です。と、少女は分身の俺の微妙な感じでの確認に笑顔で可能である事を説明してくれる。
「あ…そう…でも組織のトップなんて俺には向いてないと思うからいいや。新参がいきなりトップに立つと直ぐに引きずり下ろされそうだし」
「坊ちゃんが引きずり下ろされる事は絶対にありませんが…面白く思わない人達は出て来るでしょうね」
分身の俺がなんとも言えない気持ちで呟いた後にもう一度断って予想を話すと、分身のお姉さんは断言した後に分身の俺の予想に賛同するかのように返す。
「新参がトップに立つ以上ソレは避けられない事さ、仕方ない」
「…まあ、そんな事より…帝国との戦争は現状どんな感じなの?俺ら一応援軍に来たわけだし」
分身の女性の一定の理解を示すような反応に分身の俺は話題を変えるように本題を切り出して状況を確認した。
「…現在帝国側の兵士達が海岸付近を占拠し、大急ぎで拠点を建設している。との報告が入っていまして…どうやら帝国側は拠点の建設を最優先しているようなので我々は周りの村や町の人々に避難を促している状況です」
「…なるほど」
「だったら敵が拠点を完成させる前に攻め込みたいね」
「多分あと一日二日でおおかた完成するから難しいと思う。でも急いで兵を集めて攻め込んだ方が良いのは確かだ」
少女が真面目な顔で報告して来ると分身の女性が速攻のような考えを告げ、分身の俺は一部否定的に返しながらも肯定的に受け入れる。
「…ではクライン大魔導師、この件をお任せしてもよろしいですか?」
「あ、はい。出来る限り頑張ります」
「よろしくお願いします」
少女は一任するようにふんわりとした確認をして分身のお姉さんが了承すると軽く頭を下げた。
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