青年期 222

…敵が国内から完全に退却したので分身の俺らは兵士達の指揮権を前線司令官に返して一旦宿営地へと戻る。



「じゃあ王都に戻って報告した後にちょっと観光してから帰ろうか」


「はい」


「うん」


「師匠も一緒に来ますよね?」


「ああ、同行させてもらう」



分身の俺が予定を告げると分身の二人が了承し、男に確認すると了承してくれたので…



分身の俺は外に出た後に変化魔法を使ってドラゴンに変身した。



「…ほう、既にあのドラゴンにまで…もしや厄災の龍にも?」


「アレは魔力の消費が重過ぎる上にあまりに過剰戦力すぎて必要性が全く無いので、使えはしますが使った事はありません」


「なるほど」

「えっ!?あんたあの『厄災の龍』にもなれるのかい!?」



男が意外そうに呟いて尋ね、分身の俺が肯定するように使わない理由を話すと男の納得の言葉と分身の女性の驚愕したような言葉が被りかける。



「そりゃ魔物素材さえあれば何にでも変化出来るからね。行くよ」



分身の俺は適当な感じで答えた後に合図をして王都へと向かって飛ぶ。





ーーー





「降りるよ」


「はい」「うん」「分かった」



…宿営地から飛行する事30分ほどで王都に到着したので分身の俺は合図をして変身を解き、変化魔法の極技その2でみんなをスライム化させて落下した。



「…なるほど。聞いていた通りか…」


「…もしかしてあの高さからでも受け身で助かるんですか…?」


「とんだ化け物じゃないか…」



男が地面に着地する瞬間に完璧な受け身を取って転がった後に呟くと分身のお姉さんが驚きながら呟き、分身の女性は呆れたように呟く。



「…俺は受け身が必要だが、リデック君は要らないだろう?」


「はい。なので別にスライム化する必要も無いのですが…念の為に」


「…もう一人化け物がいた…」



男の確認に分身の俺が肯定して使う理由を話すと分身の女性は微妙な顔で呟いた。



そんなこんな雑談しながら王都に入り、城に居るであろう伯爵の下へと向かう。



…城へ行くと城門の前の衛兵が直ぐに門を開けてくれ、少し待っているとこの前と同じ案内人がやって来てこの前と同じ応接室に通される。



「…ほお…流石に他国の要人だけあって丁寧な対応だな」


「まあ…」


「待たせてすまない」



部屋の中を見渡しながらの男の弄るような発言に分身の俺が反応に困ったように呟くと、伯爵のおじさんが慌てた様子で謝りながら部屋に入って来た。



「クライン辺境伯の活躍はこちらにも届いている。この短期間でもう敵を国境付近まで追い返したそうで…」


「実は先ほど敵の軍勢を国境の外に追い出す事に成功しまして。それで自分の仕事は完了したので後は現場の人達に任せて来ました」


「…は…?」



おじさんが機嫌を取るような感じで褒め出すので分身の俺が簡潔に報告するとおじさんは話が理解出来ていないような顔になる。



「もうこちらの兵を指揮する必要は無くなったのでコレはお返しいたします。ではこれで失礼します」


「ま、待て!い、いや、待ってくれ!」



分身の俺は三つのバッジをテーブルの上に置きながら返す理由を話して立ち上がるとおじさんが引き留めた後に言葉を言い直す。



「どうかしましたか?」


「ほ、本当に敵は退却したのだな?君…クライン辺境伯が参加してまだわずか一週間しか経っていないんだぞ?」


「本当です。多分後から報告が来ると思うので、自分の発言が信じられないようであればソレをお待ち下さい。では」



分身の俺の問いにおじさんが真偽を確認するように尋ね、分身の俺は肯定して嫌味も含めながら適当にあしらうように返して退室した。



「…アレで大丈夫だったのか?」


「どうせ何言っても疑われるのは分かってますし、その都度信用させるために説明するのも面倒なので」



城の廊下を歩きながら男が確認するように尋ねるので分身の俺は慣れたように返す。



「なるほど。経験によるものか」


「坊ちゃんは残した結果が常識外れ過ぎるんですよ。実際その場に居てもギリギリ信じられるかどうか怪しい事ばっかりですし」


「それは…確かに…」



すると男は納得し、分身のお姉さんが笑いながら相手に一定の理解を示すようにフォローし始め…分身の女性も同意するように呟く。



「うむ…ソコは昔から変わらないようだな」


「変わらないどころか成長と共にどんどん規模が大きくなってますよ。本当に子供の時の方が可愛かったぐらいに」


「…あの時も大概凄かったが…それよりも、か…?」


「そりゃあ…坊ちゃんが学生の時は…」



男の笑いながらの懐かしむような発言に分身のお姉さんが余計な事を言い出すと男は若干ヒいたように呟き…



分身のお姉さんは歩いてる最中にも関わらず井戸端会議をするおばさんかのように今までの事を話し始める。



「…そろそろ昼飯の時間じゃないかい?」


「そうだね。どこかの店に入ろうか」


「…なんて事もありましてね?もうそんな事がなんて思わないじゃないですか?そりゃあ…」


「…そんな事も…」


「先生先生、あと師匠。一旦昼飯にしよう」


「あ、はい」


「もうそんな時間か」



街中に出ると分身の女性が時間を見ながら聞き、分身の俺が周りを見ながら返すも分身のお姉さんと男は未だに昔の話をしているので分身の俺は割って入ってそう告げる。



「どっか良い場所無いかな?」


「この国の料理と言えばグラッシュが一般的だな」


「「「『グラッシュ』?」」」


「煮込み料理の事だ。まあシチューと似ている…シチューみたいなものだ」



分身の俺は適当な店を探しながら呟くと男が名物的な料理を紹介してくれ、分身の俺らが不思議に思いながら聞くと分かりやすく例えて説明してくれた。



「へー」


「そうなんだ」


「じゃあソレにしましょうか」


「それなら確か有名な店があっちの通りに…」



分身のお姉さんが決めるように言うと男は思い出すように呟いて、先導するように店への案内を始める。

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