青年期 211
…そして翌日。
男性や分身の女性が押し戻した前線を維持するためにみんなで陣営を撤去して前線の近くに移動し、ソコでまた設営作業を開始する。
「国境付近までもう少しですね」
「あと一押しで国境の外に押し返せる…といったトコかな」
兵達の設営作業中に分身のお姉さんが地図を見ながら状況を話し、分身の俺は肯定するように予想を返す。
「でも残念ながら明日は修行の日だから、みんなには前線の維持を頑張ってもらう事になるね」
「今は完全にコチラ側に勢いがあるので坊ちゃんが抜けてもそう直ぐに前線が押し返される…って事はなさそうですし」
「逆にこれで俺が居ないだけでひっくり返されたら笑うって」
「ヘレネーが居れば心配は要らないと思いますよ」
分身の俺の発言に分身のお姉さんが想定を話すので笑って冗談を返すと分身のお姉さんも笑いながら女性を信頼してるような事を言う。
…その翌日。
分身の俺らはこの国にある特殊なダンジョン…『山林ダンジョン』へと向かった。
「おおー…普通は下に降りて行くものだけど、逆に上に登って行くダンジョンなんて珍しい」
「…木々が生い茂っていて死角が多いですね…どこから魔物が出てくるか分からないので普段よりも一層周りに注意を払って進まないと…」
ダンジョンの扉をくぐって中に入った後に分身の俺が山の頂上を見上げながら言うと…
分身のお姉さんは周りを見ながら警戒するように呟く。
「…ん?おっ!」
ダンジョンを少し進むと直ぐに魔物が出て来て、ゴブリンのようでちょっと違う見た目の魔物に分身の俺は早速見た事の無い奴が来たか…!と、思ってテンションが上がる。
「…ゴブリンに近い見た目という事は……『グレムリン』ですかね?」
分身のお姉さんは手に持っていた魔物図鑑を開いて確認し、目の前の魔物を予想した。
「ギャー!ギャー!」
「あー…ゴブリンの亜種とか言われてる…」
魔物が手に持っているずんぐりした形の棍棒で殴りかかってくるが、分身の俺は一切避けずにノーガードで殴られながら魔物を観察して呟く。
「ギャッ!ギャッ!」
「…ふむ…ゴブリンよりは少し力が強いか…?その分知恵が無さそうな気もするけど…」
魔物は無抵抗ままの分身の俺を棍棒で乱打しながら得意気になって笑うように声を上げ、その様子を見ながら分身の俺が観察して比較する。
「…グッ…!」
「…お」
「…やっぱり魔石の形もゴブリンとはちょっと違いますね」
十分観察したし、もういいかな…と、分身の俺が魔物の首を掴んで絞め殺すと薄紫色で小さな五角形の魔石が落ち…
分身のお姉さんは直ぐさま拾った後にゴブリンの魔石と比較しながら呟いた。
「素材もゴブリンは爪と牙だったのにコイツは角と爪だ」
「…魔石の質はゴブリンとあまり変わらないようですね」
「ふーん…」
分身の俺が魔物素材を拾うと分身のお姉さんは魔石を査定するかのように確かめながら言い、分身の俺は適当に流して先へと進む。
「…ん?」
「ギャー!」
「ギャギャ!」
「ギャッ!」
なんか茂みから音が…と思ってその方向を見ると近くの木の上から三体のグレムリンが降って来る。
「ほう…茂みの音は囮か…戦い方はゴブリンよりも単純っぽいが襲い方はゴブリンよりも知恵を凝らしてるじゃないか」
三体の魔物に棍棒で袋叩きにされながら分身の俺は意外に思って脳内の情報を更新するように呟く。
「だがまあ…連携が上手く取れてないからゴブリンよりも各個撃破はし易いな」
「グッ…!」
「ギッ…!」
ある程度攻撃を受けたところで分身の俺がゴブリンと比較しながら呟き、両手で二体のグレムリンの首を掴む。
「ギッ…!」
「あ」
「逃げた」
二体のグレムリンの姿が消えると残った一体が逃げ出した。
「サポート特化でも無い普通の魔物が逃げるなんて珍しい」
「全くですね」
分身の俺の呟きに分身のお姉さんが賛同して分身の俺らは逃げた魔物を追わずにそのままダンジョンを進む。
ーーーーー
「ギー!」
「ギー」
「ギャギャ!」
「…え?」
「おお?」
上に登る山道のような階段を見つけるとその直前で待ち伏せをしていたっぽい動きでグレムリンが三体、木の上から降って来たと思えば…
何故か分身の俺ではなく、分身のお姉さんを標的にして襲いかかる。
「…珍しい事もあったもんだ」
「「ギッ…!」」
「魔物同士で意思疎通の連携が取れてるんですかね?」
とりあえず二体の魔物の首を掴んで絞めると分身のお姉さんはグレムリンの棍棒での攻撃を余裕でひょいひょい避けながら予想を話す。
「ギャー!」
「ギャッギャッ!」
「…増えた…ふぅ…しょうがない…『バインド』」
「「「ギ…!」」」
…近くの茂みから更に二体のグレムリンが現れて分身のお姉さんを狙いに行くと分身のお姉さんはため息を吐いて無詠唱で魔法を使い、三体の魔物の動きを止めた。
「全く…下手に傷付けると魔石が取れないんですから私じゃなくて坊ちゃんを狙って欲しいものです」
「全くだ」
分身のお姉さんは呆れたようにもう一度ため息を吐いて動こうと必死にもがいているグレムリンを見ながら呟き、分身の俺は賛同して首を絞めて倒していく。
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