ライツ撃退編
青年期 193
そして翌日。
俺は猟兵隊のみんなにローズナー領へと移動するよう指示を出し、変化魔法を使って分身した後にその分身をお姉さんと共に先に行かせ…
政府の方に『俺らが出撃してライツを撃退したらウィロー領や敵国の侵攻した土地を寄越せ』という内容の要望書を書いて提出する。
…それから一週間後。
猟兵隊がローズナー領に入ったはいいが、政府からの返事はまだ来ないのでとりあえずダルベル領の近くの町で待機させる事に。
その翌日。
「…げ」
政府からの返事は来たが俺の要求は丁重に却下されてしまった。
「…まあいいか」
…やっぱり計画を前倒しにしたせいで政府の方に危機感が足りずに今回は失敗してしまったけども、結局敵がローズナー目前にまで迫れば政府も危機感を覚えて俺の要求を呑まざるを得なくなる。
なので俺はのんびりと機会が来るまで待つ事にした。
…その更に二日後。
またしても政府から手紙が届き…『一度は断った俺の要望を受け入れて許可する』と。
…まあ、お前の要求を呑んでやるからさっさと行ってライツを倒して来い…的な催促する内容だったが。
「…さて、やるか」
手紙にはちゃんと王様のサインや印があるので後から反故にされる事はないだろう…と思い、俺は変化魔法を使って分身した後にその分身を消してローズナーに居る分身の俺と記憶共有させる。
「…お」
「どうしました?」
「政府が一転して許可を出した」
「え!?」
宿屋の部屋にいた分身の俺が呟くとお姉さんが尋ねて来るので笑いながら告げるとお姉さんは驚いた。
「これでライツの軍勢を退ければオッケーか…よし、みんなを集めよう」
「はい!」
分身の俺は早速行動に移すために隊長達を集めて軍議を開く事に。
ーーーーー
「みんなお疲れさん。これからこの猟兵隊だけでライツに挑もうと思う」
「「「な…」」」「「「え…」」」
ギルドの建物内の集会所で分身の俺が労いの言葉をかけて軍議の本題を切り出すとみんな驚きながらも不思議そうな反応をする。
「猟兵隊だけで?」
「そう」
「…いつものように本陣強襲を狙うのか?」
「それが出来れば一番だけど…今回は難しいと思う」
「…ならば正面からぶつかろうというのか?」
「そうなるね」
隊長達の疑問に分身の俺は肯定や否定で答えていく。
「…猟兵隊の数は約1500、ライツの数は三万を超えているんだろう?」
「一昨日の報告では約四万だと」
「流石に無理じゃない?」
女性が戦力差を確認し、分身の俺が軽く訂正すると隊長の一人が笑いながら否定的に返す。
「普通なら無理だろうけど…猟兵隊なら大丈夫でしょ」
「ふっ…勝算があっての事か」
「相手が油断している今の内に隙を突こうと思ってね」
「なるほど…最初にソバルツを撃退したあの時と同じ方法をライツの軍勢にもやろうという事だな?」
分身の俺の楽観的な言い方に隊長の一人が笑って俺の判断に従うように肯定的に返すので、分身の俺が理由を話すと別の隊長が思い出すように確認してくる。
「そうそう。敵はウィロー伯爵の軍勢に勝って意気揚々と侵攻を進めてるハズ…そこで、俺ら猟兵隊だけなら圧倒的な数の差で圧倒的な有利を悟ってるから絶対に慢心して対応すると思う」
「なるほどね」
「なるほどな…」
「…確かにソレならば逆に数を増やすと警戒されてしまう恐れがあるか…」
分身の俺が少数精鋭で攻めかかる理由をそれっぽい感じで告げると…
明らかにおかしい内容なのにも関わらず、雰囲気や勢いに流されてなのか隊長達は納得し始めた。
「じゃあどこで戦うか…を決めようか」
「コッチから突撃するんなら広い場所が良いんじゃない?」
「そうだな。下手に入り組んだ地形で開戦すると相手にも戦術を使われてしまう余地が生まれる」
分身の俺は開戦の場所を選ぶように言ってウィロー領の地図をテーブルの上に広げ、隊長達が意見を出し合って話し合うのでペンで候補地に印を付ける。
「…なるべくなら敵が町や村に逃げ込まないように離れた場所が良いだろう」
「…って事は…コッチかコッチ…あとこの平原地帯か…」
「この平原の近くには森がある。敵が森に退がると面倒だぞ」
「…確かに」
俺らの突撃が一番効果を発揮し、なおかつ敵が退がって逃げた場合にも直ぐに対処出来るような…そんな条件を満たしてる場所を探して隊長達は地図を見ながら選択肢を絞り込んでいく。
「…となると…ココかココ、だな」
「そうだね。あたしとしては敵の進軍を最小限に留めるためにココで戦った方が良いと思う」
「…だが、ココで迎え撃った方が良いのではないか?敵が進軍で疲労していればそれだけ戦い易くなる」
「確かに…ココとココじゃ僕達の移動時間もだいぶ違ってくるし…」
…最終的に選択肢に残ったライツから近い場所と、俺らから近い場所…の二つの平原地帯のどちらを選ぶかで隊長達の意見が割れた。
「…よし。さっさと敵に勝ってお帰り願うためにココで戦おう」
分身の俺は少し考えた結果、女性が推したココから遠い方の平原地帯を選ぶ事に。
「…そうだな。敵国に近い方がさっさと撤退して行くだろう」
「異議無し」
「僕も」
「俺もだ」
「どうせ我々が勝つ事が決まっているのならば場所などどこでも同じ事よ」
すると隊長達は分身の俺の判断を尊重するように了承してくれる。
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