青年期 184
…それから二日後。
国の承認を得てガウ領が俺の手元に戻って来たので、さっそく『暴動を止めたら税率を前の時と同じく半分に戻す』という治安回復のための一手を打った。
「…大丈夫ですか?」
「何が?」
自室でのお姉さんの心配するような確認に俺は不思議に思いながら聞く。
「領内に周知しても直ぐには暴動は収まらないのでは?」
「ああ…まあ完全に収まるまでに4日ぐらいはかかるかな?」
「いくらなんでもそんな上手くいきます?」
お姉さんが確認するように尋ねるので俺は肯定しながら予想を話すとガウの様子が様子だからかお姉さんは否定的に返してくる。
「大丈夫大丈夫。そもそも暴動を主導してるのは俺の手の者だし」
「…えっ!?」
俺の返答にお姉さんは一瞬理解出来ないような顔をした後に驚く。
「だから遅くても一週間では沈静化するよ」
「…坊ちゃんも工作員を使ってたんですね…」
「ははは、当たり前でしょ。相手が使う手をコッチが使わない手はないからね」
俺が安心させるように言うとお姉さんは意外そうに呟き、俺は笑って肯定した。
「いつからですか?」
「最初から。ガウ領を没収される前から裏社会の人達には前もって指示を出してた」
「なるほど…こうなる事を見越して管理下に置いていたんですね」
「いや、今回の件はただ単にちょうど良かったからお願いしただけで、管理下に置いた元々の理由は普通に治安維持のためだよ」
お姉さんは俺の返答を聞いて誤解や勘違いするように納得し始め、俺は否定した後に訂正する。
「…でももし言う事を聞かずに暴動を続けた場合にはどうするんですか?」
「それは無い。と断言したいところだけど、他の貴族に懐柔されてる可能性も確かになくはないね。限りなく低いだろうけど」
「そうなった場合には猟兵隊を派遣して鎮圧に?」
「うーん…放っておいて良いんじゃないかな?他のところがどんどん沈静化していったら勝手に鎮まるだろうし」
お姉さんの最悪の事態を想定した問いに俺は否定的に返すも、お姉さんは対応を確認して来るので適当に答えた。
「…確かに。よく考えたらそうですよね」
「まあ裏切ったら裏切ったで粛清すればいいだけじゃん。領内の治安維持のために、ってルールを定めて資金を与えてんだから…ルールを破ったらそりゃそうなるよ」
「…な、なるほど」
納得するお姉さんに俺が処罰するような直接的な対応を話すと微妙そうな顔で返す。
その一週間後。
ガウ領の暴動も完全に無くなり、領内は前と同じくいつも通りの平穏な状態を取り戻したようなので…
ローズナー領に退避させていた人達をガウ領へと帰還させる事に。
もちろん『そのままローズナー領に残りたい』という希望者がいる場合は帰還させずにローズナー領へと籍を移してもらう。
「…おおう…これは…」
「どうかしました?」
俺が政府から送られて来た手紙を読んで呟くとお姉さんは不思議そうに尋ねる。
「コレ、国から。ガウ領の税金をウィロー伯爵の時の分まで倍払って欲しいんだと」
「えっ!?……ほんとだ…なんでこんな…?」
「国庫が苦しいか、三国に一気に攻められた時のために貯めておきたいか…まあどちらにせよあくまで『要望』だから『要求』じゃないんだよね」
俺は手紙を渡しながら内容を軽く話し、手紙を読んで驚くお姉さんに予想を告げながら強制では無い事を伝えた。
「強制じゃないのなら払う必要は無いのでは?」
「そう。コレは結構な賭けになるからね…国が恩を感じてくれるか、それともカモだと思って財布扱いしてくるか…」
「うーわー…これは難しい判断になってきますねぇ…」
お姉さんの確認に俺が肯定して、言われるがまま払った場合の結果が読めない事を告げると…
お姉さんも同意して考え込むように呟く。
「まあまだ時間はあるし、代行達の意見を聞いてから決めようか」
「そうですね。その方が良いと思います」
「流石に財布扱いされると困るからなぁ」
俺が判断を先送りする事を告げるとお姉さんも賛同し、俺はおどけてボケるように言う。
「いくら魔石を売却したお金があるとはいえ、無駄な消費を続けるといずれは無くなってしまいますし」
「…何があるか分からないから最低限の保険用の金だけは残しとかないといけないからね」
お姉さんは困ったように笑いながら国に献金しまくった後の事を注意するように話すので俺も賛同するように堅実な意見を返す。
「…しかし国…政府の方に恩を売れるのであれば、多少無理してでもお金を差し出した方が良いとは思いますが…」
「発言力や影響力が上がると色々と楽になったりするし」
「うーん…やはり判断が難しいですね…どう転んでもおかしくないだけに、どう転ぶか予想がつかない…というのが…」
…話は終わったと思いきや…
お姉さんが少し考えてメリット部分に言及し、俺が簡単に説明するように言うとまたしても考えながら呟いた。
「まあ一旦出し惜しむ、って言う手もあるけど。倍払う、って言ってから本来の分を納めた後にアッチから催促されて期限ギリギリに追加分を納める…みたいな」
「なるほど…焦らすわけですね!」
「そう。相手の出方次第では『そっちの態度が気に食わないんで追加はやっぱやめました』って拒否れるわけだし」
「…逆に強気に出る、と…流石は坊ちゃん!そんな駆け引きもあったとは!」
俺の結構ギリギリで危ない感じの駆け引きの方法を聞き、お姉さんは意外そうな顔で驚くように褒めてくる。
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