青年期 182
…その後、昼食を作ってあげた後に男と手合わせをして夕方まで話をしてから帰る振りをして分身を解除させる。
「…ほー…なるほどね…」
「どうかしました?」
夕飯の準備をしながら俺が呟くとお姉さんが不思議そうに尋ねた。
「なんかドードルの公爵は着々と戦闘…戦争?準備を進めてるらしい」
「あ。そういえば分身がドードルに行ってるんでしたっけ?」
「そうそう。俺らの国が今結構面倒な事になってるじゃん?相手からしたらそのチャンスに将軍が一向に動こうとしないから自分で攻め入る事にしたんだと」
俺の報告を聞いて思い出すように確認するお姉さんに俺は肯定して返す。
「…迷惑ですね…」
「全くだ。でも戦いってのは他人の不幸や弱みにつけ込む方が有利に動くからねぇ…」
お姉さんの呟きに同意しつつも俺は公爵の考えには肯定的に呟く。
「…まあだけどこれで三方向から攻められるという辛い状況になってきたなぁ」
「そうですね。三国が協調して一気に大規模な戦力を投じて来られると東のトラトラットに援軍を要請しなければならなくなると思いますが…」
俺が今の国の状況を整理するように言うとお姉さんは肯定して最悪の状況を想定しながら呟いた。
「こりゃ大変だ。今頃軍閥のトップも頭が痛いだろうね…バタフライエフェクトにしても良くもまあこんな事態になったもんだ…」
「?蝶がどうかしたんですか?」
「いや、ただの例え話し。なんでもないよ」
俺の同情するような呟きにお姉さんが不思議そうに聞くので俺は適当に誤魔化す。
…それから三日後。
ウィロー伯爵から手紙が届いたので読んでみると…
『金銭と引き換えにガウ領を譲り渡す』的な提案が書かれていて、つまりは売却するような内容だった。
「ははは、アッチも相当切羽詰まってるようだ」
「なんて書かれてたんですか?」
「ガウ領を俺に売りたいんだと」
「え!?」
俺が笑いながら言うとお姉さんが不思議そうに聞くので手紙の内容を簡単に話すとお姉さんは驚いたように俺を見る。
「まあ断るけどね」
「断るんですか?」
「うん。どうせいずれは手放す事になるんだから、今わざわざ金払ってまで手に入れる必要も無いし」
「なるほど」
俺の判断にお姉さんが不思議そうに聞き、その理由を話すと納得したように返す。
「他の人に売ろうにも今あんな事になってる領地を買ってくれる人なんていないと思う」
「治安が悪くなってる上に収支も大赤字ですからね…」
「もう少し早く損切りすれば良かったのに…忙しくて判断が遅れたのかな?ま、俺にはどうでもいい事だけど」
俺が根拠を話すとお姉さんも賛同し、俺は伯爵の判断が遅かった点を指摘しつつも適当な感じで話を切り上げた。
「…もし、今買えばウィロー伯爵に恩が売れるのでは?」
「無い無い。アッチは俺がガウ領を欲しがってる前提で提案してるんだから今買えば逆に恩を着せられるよ」
「…なるほど。ソレは困りますね…」
「そもそも敵対してる貴族に恩を売ったところで恩を仇で返されるだけでしょ。アッチは利用する事しか考えてないんだから」
「それもそうですね」
お姉さんの少し考えての確認に俺が否定して逆用される可能性を告げると納得しながら呟き、伯爵達を警戒するように警告するとお姉さんは理解したように肯定する。
その翌日。
俺はもしもの時の事を考えて猟兵隊とローズナーの兵達にローズナー領防衛を想定した共同演習の計画を立て…
猟兵隊のみんなをローズナーに移動する指示を出した。
「一月で足りますかね?」
「一月もあれば十分じゃない?」
「うーん…」
お姉さんの不安そうな確認に俺が楽観的に返すと心配そうに呟く。
「どうせ防衛の時には俺も先生も出張るし…敵の戦力が予想よりも多ければ子供は使用人に任せて分身を解けばなんとかなるでしょ」
「なるほど…!あ、でも分身は解かない方が良いかもしれません。変装でもさせれば私とヘレネーで現場指揮官が更に二人に増えますし」
「なるほど…そんな手もあるか…!じゃあ今の内に変装とか考えててね」
「分かりました」
俺はお姉さんを安心させるように対策を話すも逆にお姉さんの提案に納得させられ、早めに準備をするよう指示を出す。
「今記憶共有とか出来ます?」
「オッケー」
お姉さんの確認に俺は変化魔法の極技その2を使ってスライム化からの分身をさせ…直ぐに解く。
「…え」
「どうかした?」
するとお姉さんが驚いたような反応をするので俺はアッチでなんかあったか…?と思いながら尋ねる。
「…き、記憶共有ってアッチにいる分身の私を消さなくても出来るんですか…?」
「出来るよ?知らなかった?」
「…今初めて知りました…分身ってホント凄い…!まさに極技…!」
お姉さんの驚愕しながらの確認に俺が軽い感じで肯定して確認し返すとお姉さんは驚いたまま呟き、今になって変化魔法の極技『分身』の真価を理解したかのような反応をした。
「ははは。便利でしょ?」
「…はい」
俺が笑いながら得意気に聞くとお姉さんは何か言いたそうな顔をするも抑えたように頷いて肯定する。
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