青年期 145
「…今の坊ちゃんの200倍って事は…平均の1000倍…!?本当にそんな人間が!?」
「居たんじゃない?なんせ1300年も前の話らしいし」
「せ、1300年って…」
驚きながら確認してくるお姉さんに俺が他の精霊から聞いた事を話すと愕然としたように呟いた。
「…にしても流石は精霊の王。呼ぶだけで相当の魔力を必要とするみたいだ」
『今の貴様ではどう足掻いても全然足りまい。我を喚びたければ最低でもその倍は必要になるぞ』
奥の方でめちゃくちゃ疲弊している6人の奴らを見て俺が微妙な顔で言うと精霊王は一応必要になる魔力量を教えてくれる。
『む…そろそろか…やはり我を長く留めておけるのは…』
精霊王が時間を図るかのように言うと奥に居た奴らがバタバタと倒れ始め…
まだ呟いてる最中だというのに維持する魔力が足りなくなったのかスーっと姿が消えていく。
「「「き、消えた…!?」」」
「消費魔力が足りずに維持出来なかったんだろう。熟練の精霊術師が6人も揃って5分も維持出来ないとは…!化け物め…!」
刺客だった男達が突然の展開に驚くと青年が説明し、精霊王の規格外さを知らされたように呟いた。
「…あの状態だと今の俺じゃ召喚は無理だな。本来の状態だとしても1分維持できれば良い方か…?」
「…坊ちゃんでもソレって…というか、坊ちゃん精霊王とも契約を結んでたんですか?」
「成り行きでね。でもちゃんとした手順を踏まないと出会い頭で殺されるから真似はしない方が良いよ」
周りを見て状況を把握しながら呟くとお姉さんが呆然としたように呟き、疑問を尋ねるので俺は肯定した後に経験談を話して警告する。
「まあそんな事より…どうやら精霊王が居なくなったから結界が解けたみたいだね」
「あ。本当ですね」
「よし!今だ!」
「行くぞ!」
「く、来るな!私を誰だと思って…!」
俺の話題を変えるように指摘するとお姉さんも気づき、刺客だった男達が黒いローブをつけた男を捕まえようとした。
「…!まだ息がある…!刃は確実に心臓まで達していたはず…!出血も…なぜ…?」
「くそぉ!離さんか!貴様ら私にこんな事してどうなるか分かってるんだろうな!?」
おじさんが少女の様子を確かめて驚くと男達が三人がかりで黒いローブをつけた男を確保し、男は悪あがきするように脅しをかける。
「は、ははは!どうせ私を捕まえた所でこの大聖堂からは出られんぞ!騎士団が周りを囲んでいるからな!」
「あ、今はウチの団員達が頑張ってるから大丈夫大丈夫」
「な…!なんだと…!?」
思い出したように笑って尚も無駄な脅しをかける男に俺がそう告げると驚愕したような顔をした。
「ははっ!助かるぜ!」
「流石だな。脱出の時の事は考えて居なかった…」
「そうと決まれば早速こいつを連れて行こう。あいつらが目を覚ますと厄介だ」
刺客だった男達はお礼を言ったり褒めたりして黒いローブをつけた男を紐で拘束する。
「ありゃしばらくは目を覚まさないんじゃない?精霊王に根こそぎ魔力を持ってかれてるみたいだし」
「…俺の時は丸一日寝込んだ挙句に回復するのに更に丸一日かかった」
「マジで?ご愁傷様」
俺が青年の時を思い出しながら言うとその本人が当時の状況を語り、俺は相槌を打つように適当な感じで返す。
「魔力を使い切るのと搾り出すのとでは回復の度合いに差が出ますからね…」
「まあ精霊の場合は普通に魔法を使うのとはまた勝手がちょっと違ってくるからなぁ…ああいう危険性も考慮しとかないといけないかも」
「そうですね」
お姉さんの少し考えるような呟きに俺が精霊術師の特異、特殊性を話すとお姉さんは肯定するように言う。
「…とりあえずあいつらも拘束して連れて行くか」
「はい」
一応重要参考人として必要かな?と思いながらも倒れている人達をロープで拘束するとお姉さんも手伝ってくれた。
「…よし、じゃあ戻ろうか」
「分かった」
「貴様ら後悔するなよ!」
すると刺客だった男達も協力してくれ、直ぐに終わったので拘束した人達を運んで外に出ようとすると黒いローブの男がこの期に及んでまだ脅迫する。
ーーーー
「やーやー、みんなご苦労さん」
「お。戻って来たか」
「早かったな」
建物の外に出て騎士団達と睨み合いをしながら大聖堂を守っていた団員達に俺が労いの言葉をかけると隊長達が反応して近づいて来た。
「…そいつが首謀者か」
「ああ。なんとか公っていう?」
「いや、コイツはアルバイス教の大司教だ。ユンジャ公を裏から操っていた黒幕だな」
隊長の一人が黒いローブをつけた男を見ながら呟くと他の隊長が思い出すように返し、精霊術師である青年が否定して軽く説明する。
「宗教のトップが黒幕だと…?」
「えーと…とりあえず…大聖堂内で行われていたのは国家転覆の企みだった!首謀者である大司教は我々で拘束している!」
「「「な…!?」」」
隊長の一人の呟きをスルーして俺が大声で事実を広めるように叫ぶと、騎士団の人達はどういう意味か分からんがとりあえず驚く。
「ありえないとは思うが、騎士団も共犯であれば反逆に加担したとして裁かれるだろう!もし関係無いと言うのならば犯人の連行に協力してもらいたい!」
「ど、どうする…?」
「…どうすれば…」
「くっ…!」
俺の発言に騎士団の人達は困惑したようにザワザワとし始め…
流石に治安維持部隊や一般人も集まってる中で下手な行動は取れないからか、道を開けるように動き出した。
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