青年期 142
…翌朝。
「…お」
「どうかしました?」
朝食を食べてる最中に分身が解かれて情報を把握して呟くとお姉さんが不思議そうに尋ねた。
「ガウから動かした兵、3000人が南の国境に着いたみたいだ」
「3000!多くないです?そんなに必要なんですか?」
「全くだ。領主代行殿は余裕があるのか心配性なのか…」
俺の報告にお姉さんが驚きながら確認し、俺も賛同しながら不思議に思って呟く。
「でも坊ちゃんの分身解除による記憶共有って本当に便利ですね。複数体の内、一体でも解除されたら本体も分身体も全てに共有されるんでしょう?」
「うん」
「羨ましい…!研究時間が二倍三倍に増えて期間が短縮されるなんて本当に羨ましい…!」
お姉さんはもう何度目か分からない羨みながらの確認をしてきて、俺が慣れたように流して返すといつものように妬むような事を言い始める。
「俺からしたら先生の若返りの秘法の方が羨ましいよ」
「そうですか?簡単に真似出来る事を羨まれても嫌味にしか聞こえませんよ」
俺が反撃するように言うもお姉さんはジト目のような感じで見ながら返してくる。
「いやいや。全然簡単じゃなかったし、自分限定だからまだ他人にかける事は出来ないし」
「…坊ちゃんなら直ぐに他人を若返らせる事も出来るようになりますよ。…回復魔法を使わず変化魔法を応用するだけで魔石を使う必要が無いだなんて…」
俺の否定にお姉さんが拗ねたように返し、聞こえるか否かぐらいの声でボソボソと呟いた。
「だといいんだけど」
「…そうなったら私は商売上がったりですよ…」
「大丈夫大丈夫。出来るようになったとしても俺はソレで金稼ぐ気は無いから」
「ぐっ…!人の苦労をなんだと思って…!」
お姉さんが呆れたように呟くので俺が軽いノリで邪魔しない事を告げるとお姉さんは嫉妬するかのごとく歯軋りするような感じで呟く。
「…ん?」
…朝食も終わって片付けをしているとドアがノックされる。
「マズイ事になった!奴ら…儀式を始めるつもりだ!」
俺がドアに近づこうとしたら刺客だった男が慌てた様子で入って来てそう報告してきた。
「「儀式?」」
「俺達だけでは突破は難しい…頼む!力を貸してくれ!」
俺とお姉さんの反応が被るも男は何の説明もせずに両手を合わせて頼み込んでくる。
「…まあいいけど…俺らは何をすれば良いの?」
「大聖堂の周りにいる騎士団を引き付けてくれ。その隙に俺達が中に忍び込んで地下を目指す」
「…囮か。また面倒で厄介な役割を…」
俺が了承して役割を聞くと男が地図を取り出して指差しながら計画を話し、俺は失敗したらヤバくね?と思いながら呟く。
「…コレを」
「…依頼書?大聖堂の調査って…」
「穏健派のトップであるプルジル公爵からだ。もし失敗して捕まりそうになった時はソレを見せろ」
「…なるほど。俺らの後ろ盾になってくれるわけね」
男の差し出した紙を受け取って見ながら聞くと男がちゃんと根回ししてくれてる事を告げ、俺は理解した後に傭兵団を動かす事にした。
「じゃあ30分後にみんなを集めて大聖堂に向かうから待機しといて」
「分かった。頼んだぞ」
「…行こうか」
「はい」
俺が予定を話すと男は部屋から出て行くので俺もお姉さんに声をかけて団員達を集めるために宿屋から出る。
「…交戦するんですか?」
「いや…でも場合によっては…」
団員を探しながら歩いてるとお姉さんが考えながら聞いてきて、俺は否定的に返しながらも最悪の場合を想定して返す。
…そして30分後。
「おい!待て!なんだお前達は!」
傭兵団の団員みんなで大聖堂へと行くと、大聖堂の周りを警備していた騎士の一人が呼び留めてきた。
「なにって…見て分からない?」
「今は立ち入り禁止だ!とっとと帰れ!」
「…なんで?」
俺が曖昧に返すと騎士の男が偉そうに追い返すように言い、俺は囮としての仕事をこなすために理由を尋ねる。
「なんで?だと…?俺達騎士団が立ち入り禁止だと言ったら立ち入り禁止だからだ!」
「…もしかしてアンタがその騎士団のトップなの?なんにせよ理由を知らない事にはコッチも用があって来てるんだから『はいそうですか』と帰るわけにはいかないんだよね」
「なんだと?何の用だ?」
男の横柄な態度に俺が不機嫌を隠さずに返すと男は用件を聞いてきた。
「なんでアンタにそんな事を話さないといけないわけ?」
「言えないんなら帰れ!怪しい奴を中に入れるわけにはいかん、当たり前の事だ!」
「だから、俺はなんで立ち入り禁止なのかを聞いてんの。いつもなら誰でも入れる建物が理由も無く急に立ち入り禁止だなんておかしいだろ」
「貴様…!我々騎士団に刃向かうつもりか?それがどういう事か分かってるんだろうな?」
俺が注目を集めて時間稼ぎをするために男を煽ると男はイラついたように脅しをかけてくる。
「なるほど、なるほど…どうやら大聖堂の中ではよっぽどの事が行われてるようだ。ここまで怪しいと悪どい事かな?神聖なる大聖堂でそんな事をしてるなんて…」
「黙れ!口には気をつけろ!」
俺の頷きながらのカマをかけるような呆れながらの呟きに男が声を荒げると、さっきから様子を見ていた他の騎士達が俺らの方に集まって来て…
更に他の所の警戒にあたっている騎士を呼んでまるで圧力をかけるように騎士団の人達が集合してきた。
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