青年期 102

「おおーあちー」



流石に俺の皮膚が焦げるレベルの火力を食らえば無傷とはいかず…



重度の火傷のようにデロデロになった皮膚を即変化魔法を使ってスライム化の応急処置で元に戻す。



「…エグいな。一瞬でアレか…」



…おそらくあの少女は火の精霊であろう…とあたりを付け、一瞬触れただけで俺でも火傷するレベルのヤバさである事を感じながら呟く。



「おっと、っと…流石に、ガード出来ないのは、キツ…いな…っと」


『…この人間…できる…!』



少女の瞬間移動にも近い速度での掌底や張り手っぽい攻撃を避けながら、同時に展開される魔法での攻撃もなんとか避けて呟くと少女が認識を改めるように言う。



「…やべー…素の俺では全く相手にならんな…流石は精霊。変化魔法を使わないと倒せないって事は魔物に例えるなら確実に上級…下手したらボスクラスかもしれん」



俺は一旦大きく距離を取って離れながら少女から目を離さずに強さを分かりやすくするために魔物と比較する。



「…でもまあ倒す事は出来なくても勝つ事ぐらいなら今の素の状態でもなんとかいける、か…?」



…俺と少女が戦い始めてまだ5分ぐらいしか経っていないというのに青年は既に疲れていて、明らかに疲労の色が見える表情をしていた。



「…あの精霊の強さはハンターならA級は確実…このレベルの精霊をあと一人使役してて、30分も持続できれば俺と同じM級だな…おお、恐ろしい」



俺は精霊の強さを評価しながら『精霊術師』という魔法使いの底知れぬポテンシャルの素晴らしさに気づいて嬉しくなりながら呟く。



『どうしたの?もう終わり?』


「いやいや、このまま続けるとソッチが持たなそうだから少し休憩を挟もうと思ってね」



俺が状況把握や情報の整理をしていると少女が得意気に笑いながら挑発してくるので、俺は青年を指差しながら余裕の態度で返す。



『…へぇ、面白い。なかなかに底が見えない…こんな人間を見るのは一体いつ振りだろ…?』


「…このまま時間切れで勝つ…ってのもつまらないし、かと言ってあの精霊が邪魔で攻めきれない…」



少女の嬉しそうな感じでの意外そうに思い出すような呟きに俺がこの先の展開を考えながら呟くと…



『…じゃあどうするの?』


「おおっとぉ!?」



視線を外した一瞬の内に少女が俺の隣に居て意地悪をするような顔で尋ねるので俺は驚きながらも即座に回避行動を取ってその場から離れる。



『ねえ、どうするの?』



少女はイタズラでもするような笑顔で俺にもう一度尋ねた後に青年の側へと一瞬で移動した。



「…よし、分かった。俺と契約しない?」


「なっ…!?」『えっ…!?』



俺がふと思いついた面白い事をそのまま口にすると青年と少女が同時に驚く。



「魔力の量ならソッチよりも多いよ」


『…確かに今の契約主よりも多いようだけど…たかが5倍じゃなぁ…せめて最低でもあと倍は欲しいところね』



俺の青年を指差しながらの引き抜きに少女は考えるように呟くも否定的に答える。



「いやいや、5倍あれば十分じゃない?」


『…人間でも『契約』という言葉の意味と重みは分かると思ったけど…契約を自分の都合で途中破棄すると罰があるの。だったらその罰に見合うだけの物を用意して貰うのは当然でしょ?』



俺が微妙な顔をしながら聞くと少女が呆れたように呟いて軽く説明して同意を求めてきた。



「そりゃそうだ」


『私と契約したいのなら今の契約主との契約期間が終わった頃にまた契約を持ちかけてくる事ね』



俺の同意に少女はサラッと髪を靡かせるようなポーズをして上から目線で返す。



「じゃあ…俺と契約してくれるならコレをあげる…って言ったらどう?」


『!?そ、ソレは…?』



俺は空間魔法の施されたポーチからゴブリンの魔石を取り出して見せながら確認すると少女が驚いたように尋ねる。



「コレは『魔石』っていう魔素魔力の塊。普通の人じゃ手に入れられない珍しい物だよ」


『ふ、ふん…ひ、一つだけじゃ…』


『するー!』

『ほしー!』

『するー!』

『ちょうだーい!』


『あ、こら!』



俺の説明に少女は心が揺れ動いてるかのような反応をしながら渋るかのように断るも妖精達は俺の周りに集まって来た。



「…!一体どうなっている!?呼び戻せ!」


『…だめ、支配を外された…あの子達、あの人間と契約する気みたい』



青年が焦ったように狼狽えながら命令するが少女は難しい顔で失敗した事を説明する。



「なあ、アレより強い精霊とかいる?」


『いるー!』

『高位精霊もっとつよーい!』

『契約したらよぶー!』

『コレならきっとくるー!』



俺の問いかけに妖精達は肯定しながら中々強かな交渉をしてきた。



「オッケー。じゃあ契約するから呼んでくれ」


『きゃははは!』

『すごーい!』

『こんなのはじめてー!』

『すごーい!』


『くっ…!妖精のくせに…!』



俺が了承しながら指示すると魔石が粒子になって消え…



妖精達は喜びながら俺の周りを高速で回ると少女が嫉妬したように妖精達を鋭い目つきで睨みながら呟く。



『よぶー!』

『くるー!』

『くるー!』



喜びで動き回っていた精霊達の動きが止まったかと思えば目の前の地面に魔法陣が現れ…



『…我を呼び出したのは貴様か?』



炎を纏った赤色の鬼が出てきて俺に向かって尋ねてくる。

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