青年期 69

そして夕方。



敵軍は都市を包囲したまま一切の攻撃行動をせずに使者を送ってくる。



「…そちらの申し入れである一騎打ちを受けよう」


「あ、ホント」


「ただし一騎打ちは大将同士では無く、お互いに代表者を一人選出しての戦いだ」



使者の発言に俺が嬉しくなりながら相槌を打つと釘を刺すように条件を提示してきた。



「別にそれで構わないよ」


「感謝する。では我々がその一騎打ちに勝てばそちらはこの城塞都市を引き渡し、そちらが勝てば我々は手を引く…という条件でよろしいか?」



俺が軽く了承すると使者は軽く頭を下げて礼を言い、取り出した紙を読み上げながら確認する。



「『引き渡す』ってのは門を開けて受け入れるだけでいい?それとも俺らが出て行く事になる?」


「…全ての門を開けるだけで良い」


「じゃあそっちが『手を引く』ってのは?ただ全軍撤退するだけ?ちゃんとその後の一定の期間は攻めて来ない…とかの約束とかある?」


「それは……一度戻って詳細を確認させてくれ」


「どうぞどうぞ」



俺の細かい確認に使者は困ったように返し、上の判断を仰ぐために戻ろうとするので俺が促すとそのまま戻って行った。



「…大将同士では無く『代表者』ときたか…」


「どうやら向こうの大将は腕に不安があるようだな」


「まあ強さだけが将の器ってわけじゃないけど…代表者って言うぐらいだからよっぽどの人が出てくるかもね」



使者がいなくなった後に隊長達が相手が提示した条件から敵軍の状況を把握するように話し合う。



それから一時間後。



辺りが暗くなってきてそろそろ夕飯の時間が近づいてる頃に再び使者がやって来て一騎打ちの勝敗に関する書類を差し出してきた。



「…はい」


「…確かに」



俺は書類に書かれている内容をちゃんと読んだ後に合意してサインし、使者に渡すと受け取って確認した後にまた戻って行く。



「この国では一騎打ちをするにも合意書や同意書が必要なのか?」


「変わった風習だな…」


「多分事前に取り決めした約束を反故されないように…じゃない?辺境伯のトコでの一騎打ちの時もこんな感じだったし」



不思議そうに聞いてくる隊長達に俺はこの前の事を思い出しながら予想を告げる。



その翌日、相手が指定した時間に分身の俺を行かせ…



本体の俺は仮面を付けてローブのフードを目深に被り、城壁の上からお姉さんと一緒に一騎打ちを見学する事に。



「…敵陣での一騎打ちって怖いですね…」


「そう?」



分身の俺が敵陣の近くの敵兵達が囲んでいる場所に行くとお姉さんがボソッと呟き、俺は楽観的に聞く。



「だってコッチが勝ってもその後に集団で襲いかかって来そうじゃないです?」


「一騎打ちの相手より弱い奴が何人いても返り討ちにすれば良くない?」


「…まあ、坊ちゃんからしたらそうですよね…」



お姉さんの確認に俺がそう聞き返すと微妙な顔で笑いながら呟いた。



「…お。始まるみたいだね」



それから5分ぐらい経って相手の代表者っぽい男が敵兵の囲みの中に入って行く。



「…貴殿が先のラスタとの戦いでガナンド将軍を退けたと噂される傭兵か?」


「そうだよ。お手柔らかによろしくね」



男は分身の俺の前に来ると確認してくるので分身の俺は余裕を見せながら挨拶をする。



「ふっ…この状況下でその余裕とは…いざ正々堂々と雌雄を決さん」


「頑張って」



男の笑っての発言に分身の俺が手を振って返すと男は背中を向けて離れて行った。



そして一定の距離を取ると振り返って槍を構える。



「…では始めよう」


「いつでもどうぞ」



男が目を瞑って深呼吸をすると準備が整ったかのように言うので分身の俺は鉄の棒を肩に乗せて相手に先手を譲った。



「ふっ…」



男は笑って構えを解くと普通に歩いて距離を詰めてくる。



「…はっ!」



…相手の槍の間合いまで距離が縮まった瞬間、男は一瞬で構えて踏み込み分身の俺の顔めがけて高速で槍を突いてきた。



「おっと」



動きは全て見えていたはずなのに相手の高度なフェイントに分身の俺は反応が一瞬遅れたようで…



回避したのに完全には避けきれず槍の刃先がこめかみの方を掠めていく。



「はあああ!!」


「…流石に代表に選ばれるだけあって恐ろしく速い突きですね」


「全くだ。強化魔法の使い手以外なら最初の一発で死んでたね」



男が連続して突きを放ち、分身の俺が回避してる様子を城壁の上から見ていたお姉さんが感想を言い…俺も同意する。



「でも流石は坊ちゃん。全部避けてるじゃないですか」


「避けてるだけで避け切れてるわけじゃないと思うよ」


「一応当たってるんですか?」



俺を褒めるお姉さんに訂正すると少し驚くように確認してきた。



「まあ。でもあの程度じゃ当たってもかすり傷一つ付かないから本当は避ける必要なんて無いんだけど」


「へー…じゃあ今は遊んでるんですね」


「対人修行なんだけど…なんでもいっか」



俺の返答にお姉さんは相手の突きを避け続けてる分身の俺を見ながら弄るように返すが、別に拘る事じゃないので流す事に。



「…やっと見切れた…ていっ」


「くっ…!がっ…!」



分身の俺は敵の攻撃に慣れたので突き出した槍が戻る前に左手で柄を掴み、鉄の棒で男の腹を突く。



「っ…!」



そして足払いをして横向きに倒すと同時に男の頭を兜の上から叩いて気絶させる。

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