青年期 16

ーーーーーー





「…さーてと…」



…日が昇り始めて周りが少し明るくなって来た頃、俺は布陣する敵兵達を見ながら戦いが始まる前に呟いた。



そして味方の兵達が動く前に俺一人敵陣に近づく。



「やーやー!我こそは傭兵部隊を束ね、今日より全ての兵の指揮を任された司令官なり!お互いにこのまま戦っても無駄に時間と兵士を消耗するだけである!その無駄を省くためにそちらの大将に自分との一騎打ちを申し入れる!」


「…なんだと…」


「アイツが司令官…?」


「一騎打ちだと…?」



俺が名乗りを上げて敵に一騎打ちを提案すると敵陣がザワザワし始める。



「…おっと。やっぱ駄目か」



返事を待っていると矢の雨が見えたので俺は予想通りだな…と思いながら後退した。



…敵兵達はやはり守りを固めての防衛に徹しているからか俺を追ってくる様子を見せないので俺はそのまま傭兵部隊と合流する。



「…だから言っただろう?無駄だと」


「騎士団同士の戦いでも戦場で一騎打ちなんて珍しいのに」


「…万が一の可能性にかけたんだけど、やっぱり万が一は万が一だった」


「ははは!それはそうだ!」



男が呆れたように言うと他のハンターも賛同し、俺のボケるような返答に知り合いのハンター達が笑う。



…それから5分もしない内に味方の兵達が動くので俺ら傭兵部隊も敵陣を両側から包囲するように動く。



「…今なら包囲できそうじゃない?」


「いや、包囲すると本陣から援軍来られた時に逆に包囲し返されるから俺らはこのまま待機で」


「分かった」



俺らが敵陣の斜め後ろに陣取ると知り合いのハンターが提案するので否定して理由を話すと他のハンターが了承した。




「…敵の本陣が全く動きを見せないんだけど」



二時間ほどその場で待機していると知り合いのハンターはヒマそうに敵本陣を見ながら言う。



「多分俺らが居るから下手に動けないんじゃないかな?もし援軍を出して人数減らそうもんなら俺ら傭兵部隊に隙を見せる事になるし」


「…どうやら昨日一昨日の強行突撃が効いているようだな」


「そゆこと」



俺の予想に他のハンターも予想するように返すので俺は肯定して待機状態を維持する。



「俺ら傭兵部隊の今回の役割は牽制と足止めだからね…敵が動きを見せない限りは暇かも」


「…このままの状態が続けば敵はいずれ削り殺されるだろうな」



念のため釘を刺すように役割を告げると別のハンターが前線の方を見ながら言う。



「いくら守りを固めてるとはいえ両側からの挟み撃ちじゃ厳しいからねぇ…下手に退がると真ん中の人達が圧死する可能性もあるし」


「さっさと撤退すればいいものを…」



俺も前線の戦況を見ながら返すと知り合いのハンターは呆れたようにため息を吐いて呟く。




そして数時間後。




昼飯の時間になれども戦況は一切変わらないので俺らは支給されてる携帯食料を食べながら変わらず待機。



…それから夕方になっても一向に敵本陣は動きを見せず…



敵の前線が地味に削られていっている中、暗くなる前に…と俺らは町へと撤退した。



「…結局今日は何もしなかったねぇ」


「そうだな。だが兵の損害が無いのはありがたい事だ」



陣営の中で知り合いのハンターが笑いながら言うと他のハンターも賛同するように笑う。



「…今日は余裕があったし、回復魔法を使える人達をアッチの手伝いに行かせようか」


「うむ。いい考えだ」


「戦力は少しでも多いに越した事はないからな」



俺が余裕が出来た分の仕事を提案すると別のハンター達も同意する。



「…じゃあ俺が連れて行くから呼んで来てくれる?」


「分かった」


「ああ」


「了解した」



俺の指示に知り合いのハンター達は了承して自分達の部隊内の回復魔法を使える魔法使いを呼びに行く。




…その翌日も俺が名乗りを上げて一騎打ちを申し入れるが拒否されてから始まり…




戦況は昨日と同じまま俺ら傭兵部隊の出番は全く無く4日目が終わった。



「…明日で終わりだな」


「ああ、敵の数はだいぶ減っている。明日で撤退しなければ包囲されて全滅だろう」


「逆にこちらは兵の消耗が少ない上にこちらから魔法使いを派遣している分戦場に復帰できる人数も多い」


「負傷して離れていた傭兵達もほとんど復帰してるからね」



みんなで陣営に戻ると知り合いのハンター達が敵の判断や行動を予想しながら話し合う。



「明日はもしかしたら国境の所を守ってる本陣と合流してソコの防衛に回るかもよ?」


「そこまで退がらせたら戦果は十分だろう。あとは騎士団の到着を待って国境から追い払うだけだ」


「まあ数ではコッチが勝ってるから敵の真ん中に突撃かまして左右二つに分けての包囲で全滅させる…っていう手もあるけど」



明日の相手の出方次第だね。と俺はハンター達に予定してる作戦の内の一つを教える。




…翌日。




俺らの予想通り敵兵達はみんな国境付近の本陣へと後退して防衛の陣形を取った。



「やーやー!我は兵を率いる司令官なり!敵大将に三度の一騎打ちを申し入れる!」



俺は軍事行動に移す前にまたしても名乗りを上げて一騎打ちを申し入れたが…



10分待っても敵は何もせず、返事も無かったので下がって傭兵部隊と合流する。



「じゃあ作戦通りに。突撃ー!!」


「突撃ぃ!」


「突撃開始!」


「遅れるな!突撃だ!」



俺は周りのハンター達に指示を出すと号令をかけて真っ先に敵本陣へと突っ込み、その後ろから1000名を超える傭兵部隊がついて来た。



そして俺たちを追うように味方の兵達が空けた穴を進んで敵を包囲するように動き出す。



「よし突破!一旦そのまま突き進む!」


「足を止めるな!そのまま突撃を続ける!」


「前へと進め!」


「走れ!置いて行かれるぞ!」



…敵のど真ん中を駆け抜けて突破した後に俺が少し離れた場所で様子を見ようと指示を出してそのまま走る。



「ははは!これは追い返すどころかそのまま全滅させられるのではないか?」



敵の本陣から1kmほど離れた場所で止まって戦場の様子を見ると作戦通り敵が二つに分断された状態で包囲されていて…



その状況を見ながら男が興奮した様子で笑う。



「味方の指揮官の迅速な対応のおかげだね。包囲に失敗したらもう一回突撃しようと思ったけどその必要は無さそうだ」


「どうやら今日中には終わりそうだな」



俺が味方を褒めると別のハンターが戦況を見ながら余裕そうに返す。



「…念のため俺らの部隊を二つに分けて包囲を崩されないようどこかが薄くなり始めたらその場所の補強に行こうか。その前に今の内に負傷者は町に帰還させた方が良いかも」


「分かった。まずは数の把握だな」


「負傷者の人数を確認する」



俺は戦況の流れを予想して早めに次の指示を出すと知り合いのハンター達は了承して直ぐに行動に移した。

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