青年期 9

…そんなこんな戦線を維持する事、数時間後。



昼過ぎに差しかかると町の方から増援が来て俺らとの入れ替えを指示された。



「…やっと休めるな…」


「…そうだね。俺らの無茶な突撃と背後強襲のおかげで結構前線を押し戻せたんじゃないの?」



味方の増援と持ち場を交代し、味方の兵達の後ろに退がりながら男が疲れたように言うので…



俺は周りの戦況を見ながら俺らが上げた成果を予想する。



「…しっかしみんなボロボロだねぇ?大丈夫?」


「…逆にお前さんはそんな軽装でなぜ無傷なんだ…?」


「突撃の時には先頭で、後退の時にはしんがりと一番危ない場所に何度も居たはずだが…」


「それに全く疲れてないようにも見える…」



40名の傭兵達との帰還中に俺がみんなの様子を見ながら確認すると、男が驚きながらも若干呆れたような感じで聞き返し…



他の仲間達も俺を見ながら不思議そうに呟く。



「ははは、これでも鍛えてるからね」


「…理由になってないような気がするが…まあいい」



俺が笑いながら返すと男が微妙な顔で呟くも特に追求はせず、そのまま町に到着。



みんなは町を回り込むように移動して町の外に設営されてる陣営のような場所に向かって行くので、俺は途中で別れて町の中へと入って行った。



「…どこの宿屋だっけ?」



…町に戻ったはいいが、俺はお姉さんの泊まる宿の事は聞いていないのでしょうがなく宿屋を一軒一軒回って調べて行く事に。



「…ただいま」


「あれ!?…早かったですね」



4軒目の宿屋でようやくお姉さんが泊まってる場所を見つけたので部屋に入りながら挨拶すると驚いた後に意外そうに尋ねてくる。



「うん。なんか知らないけど増援に来た人達と交代になった」


「へー…戦場に出たら一日中かと思ってましたが、そうでもないんですね」


「普通なら一時的に下げて少し休息を取らせてからまた前線に出されるんだけど…多分余裕が出来たからじゃない?」



俺が早く戻ってきた理由を話すとお姉さんはまたしても意外そうに聞くので…



俺は少し否定的に実情を説明し、今回が異例だった事を予想で話す。



「…周りの話を聞く限りここの争いは結構厳しい状況に置かれてるみたいですけど、どうでした?」


「まあ厳しい状況だったね。俺ら傭兵は集められて隊の編成とか何もなくまとめて前線送りで維持して来い…だったし」


「部隊を纏める人とか居なかったんですか?」



お姉さんが前線の状況を尋ねてくるので内情を教えると少し驚いた様子で聞く。



「分からないけど居なかったんじゃない?他の人は人手不足的な事を言ってたけど」


「…そんな状態でよく坊ちゃんを下げる余裕がありましたね…」



俺の返答にお姉さんが呆れたような感じで呟くので…



「まあ俺が傭兵をまとめて敵兵達を撹乱したからね。それで前線を少し押し戻せたから、ソレを維持するために増援を出して消耗してる傭兵達と交代させたんだと思う」


「…なるほど。『余裕があった』ではなく『余裕を作った』というわけですか。坊ちゃんが」


「ん。そんな感じ」



俺が前線での働きを教えるとお姉さんは納得したように返すので肯定する。



「そういえば昼は食べた?」


「あ、はい。坊ちゃんから貰ったハンバーガーを」


「じゃあ俺はサンドイッチでも食べようかな」



俺が聞くとお姉さんはもう済ませたようなので、昼飯を作るのをやめて俺も軽い物を食べる事にした。






ーーーーーー






「っと…ちょっと出てくる」


「分かりました」



夕方になったので一応仲間達の様子を確認しに行こうと俺はお姉さんに一声かけて部屋を出て、町の外れの陣営へと移動する。



「…怪我の具合とかどう?」


「…お前さんは…」



巡回中の兵士に傭兵達に与えられたテントの区画を教えてもらい、近くのテントを開けて声をかけると俺を見て男がちょっと驚いたように呟く。



「どこに行ってたんだ?」


「宿屋。同行者が居るからココに滞在中の間はずっとソコに居るはず」


「なるほど。しかしココなら同行者の分のテントも用意して貰えるんじゃないか?」


「ホントに?じゃあ宿に戻ったらココに移動しないか聞いてみるよ」



男の問いに俺が答えると有益な情報を教えて貰ったので俺は感謝しながら返した。



「それより怪我とか大丈夫?」


「ああ。この程度、問題は無い」


「そう?良かったね」


「しかし剣を買いに行かねば…お前さんから貰った剣ももうこんなにボロボロだ」



俺が再度状態を確認すると大丈夫そうなので他の所に行こうとしたら武器の心配をする。



「剣なら拾って来たのがいっぱいあるけど…」


「おおっ!貰ってもいいのか?」


「好きなの貰っていいよ。俺には必要ないからね」


「助かる!多少状態が悪くても手入れすればある程度使えるようにはなるだろう」



空間魔法の施されたポーチから大量に拾った剣を出すと男が喜びながら確認するので了承すると、男は一振りずつ剣の状態を確かめながら選んでいく。



「…ではこの二振りを貰おう。感謝する」


「他にも必要としてる人とか居ないかな?槍とか矢とかもあるけど」


「…ならば他の仲間達にあげたらどうだ?絶対に喜ぶぞ」


「そう?じゃあそうしよう」



男の感謝の言葉に俺が尋ねると少し考えて提案してくるので俺はその案を採用する事にした。

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