学生期 参 3

ーーーーーー





「…おっと、残り一時間か」



ようやく第六階層への階段に近づいて来た…って時に時計を見ると、どうやらダチョーの相手だけで結構な時間が経っていたようだ。



「…おーい!集まれー!」


「なんだ?」


「何かあったのか?」



俺がクラスメイト達に集合をかけると魔物と戦ってない生徒達が不思議そうにやって来る。



「戻る時間を考えたら残り一時間しかないんだが…それでも下に降りるか?それとも諦めるか?」


「あと一時間!?」


「ぐわー、ダチョーを倒すのに時間かけ過ぎてたかー…!」


「あいつ予想以上に素早かったからな…」


「…どうしたの?」



俺の問いに男子生徒達が驚き、魔物との戦いを思い出すように言うとコボルトやゴブリンを倒したクラスメイト達も集まってきた。



「残り一時間で、第六階層まで降りるかどうか…だと」


「あー…私達は別に…どっちでもいいかな?」


「うん。みんなが降りるんなら行ってもいいけど」


「でも第六階層ってグリーズベアーもいるんでしょ?大丈夫かな…」



男子生徒の一人が内容を話すと女子生徒達は判断を委ね、その内の一人が不安そうに呟く。



「…今の状態だと厳しいか…?」


「分からん。俺は体力的には問題無いが、装備が…」


「俺も。この状態でグリーズベアーの毛皮を切れるか…」



男子生徒達は自分の防具や武器といった装備を見ながら難しい顔で話し合う。



「…なあリデック。お前はどう思う?」


「俺?そうだな…不安に思うならやめとくべきだな。装備が壊れたら面倒だし」



男子生徒の問いに俺は安全第一の考えを話した。



「…それもそうだな」


「ココで無茶して装備を壊したんじゃあ割に合わないからな」


「第六階層はまた次の機会にするか」


「おう」



…クラスメイト達が話し合った結果、どうやら先には進まずにこの階層に留まる事にしたらしい。



「じゃあ残り一時間、適当に頑張ってくれ。時間が来たら呼ぶから」


「おう!」


「まずはダチョーの動きに慣れねぇとな!」



俺が再度自由行動を告げるとクラスメイト達は来た道を戻るように歩いて行く。



「…おや?下には降りなかったのですか?」



…俺も階段の前から離れようとすると担任がクラスメイトの半分を引き連れて来た。



「はい。みんなで話し合った結果、今の状態でグリーズベアーを相手するのは難しいと判断したようです」


「そうですか。時間もあまりありませんし…私達も今回はこの第五階層までにしておきましょう」



俺の返事を聞いて担任もどうやらココに留まる判断をしたようで、クラスメイト達に指示を出して引き返して行く。



「…なあリデック。相変わらずダチョーが逃げ回るんだがどうしたら良い?」



…俺がダンジョン内を見回っていると男子生徒の一人が駆け寄ってきてアドバイスを求めてくる。



「…やっぱり脚を狙えば良いんじゃないか?難しいとは思うけど」


「脚狙いか…分かった。やってみる!」



俺は他のハンター達から聞いた対処法を思い出しながら話すと男子生徒は少し考えてグループの下へと戻って行った。



…そんなこんなクラスメイト達を見守る事、一時間後。



「おーい!集合!」


「は?もう時間かよ」


「ダンジョンにいるとあっと言う間だな」



時計を見て俺が集合をかけるとクラスメイト達が不満そうに集まってくる。



「そろそろ時間だからみんな集めて来てくれ」


「分かった」


「任せとけ!」



集まったクラスメイト達にまだ魔物と戦ってる生徒達を集めるよう言うとやる気を出したように他の生徒の助太刀に向かった。



「囲め囲め!」


「逃すな!脚狙え!脚!」


「おらっ!ゴブリン邪魔だ!」



クラスメイト達は8人ほどでダチョーを囲み、数人が周りのゴブリンやコボルトを倒して包囲を崩されないよう立ち回る。



…そしてみんなが魔物を倒し終えた後に担任と合流して馬車で学校へと帰還した。



「はぁ…剣を研がないと…」


「そろそろ防具買い替えようかな…?」


「俺の装備もたった半年でもうこんなボロボロだぜ?」



予定よりも少し早い時間に学校に着いたのでクラスメイト達と共に教室に戻ると、男子生徒達が武器や防具の手入れについて話し合う。



「おっと、そろそろ飯の時間か…じゃ」


「お前はいいよなー…武器や防具の心配が無くて」


「戦う事が無いから消耗する事もないしな…」


「まあ俺が戦ってないって事は…それだけお前らが優秀って事よ」


「そうか?そうだな、そうだよな!」


「だよな。引率者の手を借りずに自分達でなんとか出来てるって事だしな!」



俺が修行場所にいこうとすると男子生徒が妬むように言うので…面倒を避けるために褒めるよう返すと調子良く喜び始める。

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