学生期 弐 23

…このぐらいなら避けなくて良いかな…と思い、全く避けずにコンコン弾が頭に当たりながら音のする方へと歩いて行くと…



試合終了の笛の音が聞こえてきた。



…どうやらウチのリーダーがやられたようで敗者復活戦も順当に負けに終わってしまったようだ。



「…残念でしたね。それより大丈夫です?何かしらの攻撃を受けていたようですけど…」



ホテルに戻ると負傷者の治療にあたっていたお姉さんがおじさんと共に部屋に来て心配そうに尋ねてくる。



「ああ…俺はちょっと痛いぐらいで平気だったけど…普通の人なら頭吹っ飛んでたよ。下手したら肩ぐらいまでは無くなってただろうね」


「「え!?」」


「…この大きさだと多分対戦車用じゃないかな?」


「…コレは…?」



俺の説明にお姉さんとおじさんが同時に驚くので大きい方の弾を見せながら言うとおじさんは不思議そうに見ながら尋ねた。



「分かりやすく言うなら吹き矢みたいな武器の矢…だね」


「へぇ~…こんな金属の塊みたいな矢もあるんですね」



俺が身近な物に置き換えて説明すると、お姉さんは先が潰れた弾を受け取って意外そうに珍しい物を見るような感じで感想を言う。



「俺も噂に聞いただけで実物は初めて見た。でも普通にコレが人に当たったらまず間違いなく死ぬよ。俺だからちょっと痛いで済んだけど」


「…それほどまでの威力が?この矢に?」


「普通の鎧なら絶対に防げないし、多分グリーズベアーぐらいなら簡単に貫通するだろうね。上手くいけばドラゴンの鱗でも割れるかもしれない」



俺の威力の説明におじさんが驚きながら弾を見るので魔物を相手にした場合の予想しながら話した。



「…そんな物を、坊ちゃんに向けて使った人が居るんですか…?」


「…明らかに殺意のある攻撃ですな。故意に相手を死に至らしめる攻撃は明確なルール違反ですぞ」


「ん。だから抗議するかどうか迷ってね…まあ最初からコレ使ってたら即座に抗議したけど、一応段階を踏んでたからなぁ…」



お姉さんが驚きながら確認するとおじさんが怒ったかのように言うので俺は運営に報告するかどうかを迷ってる事を伝える。



「段階を?」


「最初はこの非殺傷用のゴム弾だった。で、次に実弾…その次に少し大きい弾ときてコレだからね」



俺はお姉さんとおじさんにゴム弾や拾った弾を見せながら説明した。



「…坊ちゃんに効かないから矢を段々と大きくしたんですか?」


「そうだとは思うけど…一番小さい弾でも衝撃はそこそこあるからね。二つ目の弾に至っては多分金属を貫通するから上等な鎧じゃないと防げないだろうし…もし防げたとしてもハンマーで思いっきり殴られるぐらいの衝撃はあると思う」


「…そんなのを頭に?」


「うん。日頃の鍛錬と修行のおかげで平気だったけど」



お姉さんの問いに俺が銃撃について軽く説明するとおじさんが驚きながら聞くので、俺には効かなかった事を答える。



「…それでは相手はさぞかし驚いたでしょうな」


「あー…パニックになって撃ちまくったって線もあるのか…」


「でもこの大きさでもハンマーで殴られるぐらいの衝撃って事は…コレだとそれ以上の衝撃ですよね…?」


「まあ強化してても下手したら首とか折れるんじゃない?ソコは耐えてもこんなのが頭に当たったんじゃあ普通に脳震盪は避けられないだろうし」



おじさんが相手の考えを予想するので俺が納得しながら呟いたら、お姉さんが弾の種類を見ながら確認してくるので俺は肯定しながら想定を話した。



「…そんなのが頭に何回も当たったのに『ちょっと痛い』で済む坊ちゃんもおかしくないです?」


「まあ俺は鍛えてるからね」


「う、うーん…」



お姉さんの怪訝そうな問いに何度目かの平気な理由を話すもお姉さんは納得いかなそうな反応をする。



「ふむ…しかし段階的に矢を変えていったのならば故意かどうかの判断が一気に難しくなりましたな…」



坊ちゃまだからこそ、ここまでやった…という意味合いにも取れますし…と、おじさんは銃を使った相手を庇うかのような事を言う。



「…ですね。本来なら非殺傷用の矢でこと足りた、というのなら坊ちゃんだけが例外で特別なケースだった…という話にもなりますし」


「じゃあ今回は見逃すか…いくらなんでもサバゲーで対戦車ライフルはやりすぎだろ…と思わなくもないけど」


「よく分かりませんが…そうした方がよろしいかと」



お姉さんもおじさんの意見に肯定するので俺はちょっと納得いかないながらも引き下がるとおじさんが賛成した。



「…まあとりあえず、それはさておき…はー、やっと帰れる…」


「まだ時間はありますし…最後にちょっとだけ観光に行きません?」


「…そだね」



話が終わったので俺が疲れたように呟きながらベッドにダイブするとお姉さんが時計を見て提案するので、俺は賛成して最後の観光に行く事に。

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