学生期 弐 13

それから4日後。



ついに一年に一回の『一般クラス対抗戦』の日が来た。



「よっしゃー!きたぜきたぜ!俺の日頃の訓練の成果を見せる時だ!」


「今年も優勝して来年も優勝するぞー!!」


「「「おおー!!」」」



朝早くから校舎の前でクラスメイト達がやる気満々で盛り上がる中、一人の男子生徒が拳を突き上げながらかけ声のように叫ぶとみんなも乗って声を上げる。



「おはようございます。私達は第4試合場で、相手はDクラスですね」


「第4って…遠いなー」


「山の向こうかよ」



担任がやってくると試合場所と相手を告げ、クラスメイト達は場所を聞いて愚痴るように言いながら移動を始めた。



「このクラス対抗戦ってどういう形式だっけ?トーナメント?」


「いや、総当たり戦。午前と午後に分かれて一日二試合を二日間かけて行われる」


「えーと…一学年4組だから…三試合だけじゃない?」


「明日の午後は休養。で、三日後に一学年と俺ら二学年が闘って勝った方が三学年と」



歩きながらの転入生の確認にそう説明すると転入生は考えながら疑問を聞いてくるので俺は行事の細かい日程を教える。



「三日後?」


「明日の午後から三学年のクラス対抗戦が始まるからな。ちなみに一学年はCクラスが勝ち上がったんだと」


「へー…全学年同時じゃないのか…」


「試合場を広くしてるから同時に三試合しか出来ないらしい。あと試合数を増やすと見守るための先生の人数が足りなくなるんだとか」


「あー…なるほど。そういやリデックも昨日駆り出されてたな」



…そんなこんな転入生にクラス対抗戦の事を説明したり雑談しながら移動する事、約30分後。



木の杭とロープで囲われた第4試合場へと到着した。



「よーし!円陣組むぞ!集まれー!」



すると男子生徒の一人が仕切るようにクラスメイト達を集めて大掛かりな円陣を組み出す。



「去年はリデックの言う通り動いたら勝てた!」


「「「おう!」」」


「今年もリデックの作戦が上手く行けば勝てるはずだ!」


「「「おう!!」」」


「リデック!!」


「よーし、優勝目指すぞー」


「「「いえー!!!」」」



…さながらスポーツ大会のようなテンションでみんなが盛り上がってる中で話を振られ、適当な目標を言うとみんなが呼応するように叫びながら円陣を解く。



「みなさん準備はいいですね?」


「おう!」


「大丈夫」


「うん」


「いつでも行けるぜ!」


「では笛の音が鳴り次第開始という事で」



担任の確認にクラスメイト達が肯定すると担任は開始の合図を告げて相手側の方へと歩いて行った。



「よーし、じゃあ作戦の確認するぞー」


「おう!」


「伏兵しつつ隙があれば本陣強襲するグループ5名の二班は左右から周り込むように相手本陣を狙って進んでくれ」



俺はみんなを呼んで簡単な作戦会議を開く。



「分かった」


「任せろ」



俺が内容を説明すると部隊を指揮する二人の生徒が了承する。



「途中敵を発見した場合は交戦。もし相手の人数が多い場合は発見即撤退で本隊との合流を優先する事」


「もし負けそうになった場合は一人離脱させて本隊に報告すれば良いんだろ?」


「ああ。包囲されたら厄介だからそうなったら一旦下がって陣形を組み直す」



別働部隊の作戦内容を告げると生徒の一人に最悪の場合の確認をされたので俺は肯定しながら想定してる対策を話す。



「そして本隊20名は4名と3名の5グループに分かれて錐型で直進する。流石に今回は相手も多少連携してくるだろうが…所詮は烏合の衆、俺らのように統率の取れた軍事行動の前には去年同様無意味に終わる」


「「「うおー!!!」」」


「気を付けるとすれば左右からの挟み撃ちぐらいだが…まあコッチも強襲部隊が背後を襲うチャンスになるから防戦に徹した後に逆に挟み撃ちにしてやれ」


「「「おおー!!」」」



…俺の説明が一区切りつく度にやる気が余ってるのかクラスメイト達は相槌のように叫ぶ。



「じゃあグループに分かれて…後は合図があるまで陣形を組んで待機だ」


「「「おおー!!!」」」



俺が指示を出すとクラスメイト達はグループごとに分かれ…



俺を真ん中に据えた鋒矢の陣のような陣形になる。



「…お」



…そしてそれから約10分後にピー!という笛の音が聞こえてきた。




「よし、最後に勝敗の確認だ。相手の全滅もしくは俺みたいな白いハチマキを付けたリーダーを倒せば勝利。逆に俺一人だけになったら降参するから負けになる。全力で俺を守れよ」


「分かってるって!戦えないお前は安心して俺らに守られてろ!」



俺が最後の確認をすると本隊の先頭に立つ男子生徒が笑いながら返す。



「任せたぞ。では行動を開始する!先行は強襲部隊からだ」


「よし!行くぞ!」


「こっちも出るよ!」



俺の指示に左右で待機してた部隊が動き出した。



「本隊は10分後に直進行動を開始する!敵を見つけ次第即交戦だ!」


「おー!」


「やるぜ!」


「後ろは任せろ!」



俺が更に指示を出すと生徒達が声を上げ、最後尾の3人部隊もやる気を漲らせて返す。



「…なんか思ったより本気の軍事行動だな」


「当たり前よ。優勝したらレストランの食事が一ヶ月無料だぜ?」


「…レストラン?」



最後尾の3人部隊に配置された転入生が驚きながら呟くと男子生徒の一人が本気になってる理由を話し、転入生は不思議そうな顔をする。



「特別クラスの食堂の事だ。優勝賞品として全ての食堂で使える食費無料カードが貰える」


「えっ!?そんなんあんの!?」


「やっぱ貴族が通う食堂なだけあって料理がめっちゃ美味いんだよな。だから俺らは勝つためにリデックに託して従ってるわけで」


「お前も食べたら分かるぜ?ありゃ『そりゃこんだけ高いわけだ』って納得出来る味だしな」


「あの頃は毎日あんな料理を食えてたからまるで貴族になった気分だったなぁ…」



俺の説明に転入生が驚くと他の男子生徒達が去年を思い出すように話し出す。



「…っと、思い出に浸るのはここまでだ。油断してたら痛い目を見るかもしれん…気を引き締めろ!行くぞ!」


「「「「おー!!!」」」」



俺が時間を見て少し早めに号令をかけるとみんなが応じるのでそのまま行動に移した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る