子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫!

八神ユーリ

幼少期

ある日、僕はよく分からない夢を見た。



そして目が覚めるとよく分からない記憶を思い出す事になる。



ぼんやりとした知識や記憶…この世界とは全然違う平和な世界の記憶。



魔物は存在せず、機械が発達した世界の記憶。



…この記憶はいったいなんなんだろうか?



…とりあえずこの日を境に僕…いや、俺の生活は一変した。





ーーーーーーーー





…まだ薄暗い部屋の中でみんなが寝てる中、俺は一人だけ部屋を抜け出し…外の庭へと出ると院長が畑の手入れをしていた。



「おはようございます」


「おや、リデック君。おはよう。今日は早いですね」



俺が挨拶をすると院長は振り向いた後に笑顔で挨拶を返す。



「少し変な夢を見てしまって…」


「…変な夢、ですか?」


「ココとは違う…見たことも無い景色や会った事も無い人達が出てきて…」


「…それは前世の記憶、かもしれませんね」



朝早くから目が覚めた理由を話すと院長は顎に手を当てて考えるように心当たりを告げる。



「前世?」


「君が生まれる前に生きていた人の人生の事です。人は善行を重ねて亡くなれば新しい人生を歩む事ができる…と言われてますから」



でも実際に前世の記憶を持つ人とは未だ会った事はありませんけど。と、院長は分かりやすく説明した後におどけるように言って笑う。



「ですからリデック君は特別な人間かもしれませんね」


「特別…!」


「ですから困ってる人が居たら助けてあげて下さい。弱きを助け、悪を挫く事こそが神の教えですので。…おっと、そろそろ朝食の支度をしないと」


「手伝います!」


「ありがとう。頼りにしてますよ」



院長の言葉に俺が喜ぶと神の教えを説いた後に時計を見て畑から移動するので俺が申し出ると院長は笑顔で受け入れた。




…朝食後。




「リデック君、子爵夫人がいらしてますよ」


「母様が?」



子供達みんなで掃除をしていると院長が来客を報せてくれるので俺は直ぐに建物の外へと走る。



「リデック!元気そうね!」


「ソレ毎週言ってる」


「何回でも言うわよ。ほら、弟のエーデルよ」



子爵夫人である母親は俺を見ると毎回嬉しそうに声をかけるので俺が指摘するも笑って流され、抱っこしているまだ一歳の弟を見せてきた。



「おー、エーデル。賢い子に育つんだぞー」


「本当はリデックも一緒に暮らせれば良いんだけど…」



俺がエーデルの頬を突きながら言うときゃっきゃっと喜んだような反応を見せ、母親は暗い顔をしながら呟く。



「…ねえ母様。なんで俺は孤児院に預けられてるの?」


「…分からないわ。あの人にも何か考えがあるんでしょうけど…」



俺の問いに母親は首を振って現当主の父親の決めた事だと告げる。



「本当は私が毎週会いに来るのだって良い顔しないのだけど…ダメね。こんな事、子供に聞かせる話じゃないわ」



いつか迎えに来る日まで元気にしてるのよ?と、母親は暗い表情を変えて笑顔で言って背中を向けた。



「あ!母様!待って!お願いがあるんだ!」


「…お願い?なに?」



帰ろうとする母親に俺が引き留めるように言うと振り返って驚いたように内容を尋ねる。



「俺、強くなるために修行したい!だからヒーラーを雇って欲しい!」


「…ヒーラー…回復術師にでもなるつもり?適性無いのに?」


「違うよ。大怪我とかしないようにだよ」



俺が内容を話すと母親が驚いたまま聞いてくるので否定して保険である事を告げる。



「…分かったわ。すぐに手配しときましょう」


「ありがとう!母様大好き!」


「私もよ。じゃあまた来週」



母親の了承に俺が喜び余って抱きつくと優しい笑顔で返して俺の頭を撫でて離れた。

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