3分間の事件

榮樂奏多

砂漠の流離人

「困っていたので、助かりました。」

白人青年は、大きなリュックを背負いA街から車ならすぐところにある砂漠で彷徨っているのをひとりの警察官がパトロール中に見つけた。

どうやらこの青年は流離人で、こんなにも広大な砂漠があると知らず少し歩けば抜けれるだろうと思っていたところ、なかなか抜けられず方角もだんだん分からなくなってしまい、ここから抜け出せず困っていたようだ。

「いやー、ほんと助かりましたよ。実は一週間くらい前からこの砂漠で迷ってしまっていて。車があまり通らなくて、通ってもなかなか助けてくれる人はいなくて、ずっと歩き続けてて。」

青年は背負っていたリュックをおろし警察官の隣の助手席に乗り込んだ。

「こんな暑い中一週間ですよ。たまにある日陰に入ったって、夜だって30度くらいはありますよ。」

この砂漠は夏になると陽炎が立つほど暑くなっていた。

リュックからキャンディを取りだし一粒食べると、警察官にも差し出した。

『遠慮する。』

青年は思い出すように尋ねる。

「サイレン鳴らして、誰か追跡中だったりします?」

『ああ。ついさっき、A街にあるショッピングセンターで二人組の男による強盗殺人事件があったらしくてな。白い車で逃げたらしい。そう報告があってな。』

警察官がそう答えると、青年は驚いたように言う。

「え、それならさっき、二人乗った白い車が通ったけど、街と反対方向に走っていきましたよ。」

青年はそう言った。

「車、追いかけないのか?」

『まぁな。』

警察官はそのまま街へパトカーを走らせ警察署に向かった。

そして流離の青年は逮捕された。

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