愛を込めて次元を超えた花束を。
水鳥楓椛
第1話
時は20XX年。
時代はVRMMOが全盛期を迎えていた。
ある人はイヤなことから逃げるために、またある人は幸せを追い求めるために、はたまたある人は仮想空間を楽しむためにVRMMOの世界へと、異世界へと潜る。
花々が咲き誇る若草色の原っぱに、深く生い茂る木々。鮮やかな蝶や鳥が自由気ままに澄み切った空を舞い、大自然の動物たちは自分たちの世界を身体いっぱいに駆け回る。そして、人々は剣と魔法と自由の世界で己を解き放つ。
この世界では、杖を持てば想像力豊かな憧れの魔法が溢れ出し、剣を持てば望むように身体を動かせる。釣りも、狩りも、キャンプも、鍛治も、戦いも、望む限りなんでもできる。望む限り何にでもなれる。望む限り、望みを持ち続ける限り、人々は自分が望む姿であり続けられる。
僕はこの世界に花束を持って訪れる。
約束をしたわけでもなく、決まりがあるわけでもない。
でも僕は、必ずたくさんの花を抱えてこの世界で最も大きな木の下へと行く。
この世界全てを見守るような大きな大きな木は、動物たちの憩いの場だ。種族も何も関係ない。生き物たち全てが、この木に安心と包容を求めて、花の蜜に群がる蝶のようにふらふらと集まっていく。この木の下では全ての生き物が平等になる。
サバンナの中に1つしかない水場で水を飲んでいる最中はライオンがシマウマを食べないように、チーターがロバを食べないように、全ての生き物が平等な平和を求めて集まってくる。
その空気が、底なしの優しさに包まれた空気が、僕は好きだ。
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