第55話勇者召喚3
そして勇者召喚の日。
私は例の元ロベール王国跡地にいた。
見た事のない巨大な建造物がドンとある。
そう、これが枢機卿団の肝いりの施設だ。
名前は『聖教殿』というらしい。
聖教殿の中には召喚の間がある。召喚の間はこの施設の最奥にあるとゴールド枢機卿に聞いていた。ただ、初めて来たからよくわからないので案内人がついているらしい。
「こちらです」
案内役の人が私を先導してくれる。
それにしても入り組んだ構造をしている。
聖教殿は建物の中も複雑だ。これでは案内なしで目的の場所にたどり着けという方が無理だろう。まさに迷路。案内板があったところで、きっと迷う。
さすがは元聖教国の施設だと妙に感心してしまった。
「こちらです」
案内人が一つの扉の前に立つ。
この向こうに召喚の間があるのだろう。
私が扉の前に立つと、扉が自動的に開いた。
扉の向こうには既に枢機卿団たちが待機していた。
「いらっしゃいませ、大聖女様」
「ご招待いただき、ありがとうございます」
私はそう言って頭を下げた。
指定された席に着席する。
その隣にはゴールド枢機卿が座っていた。
「ね?招待状、届いたでしょ?」
「届きました」
「はっきりいってフランがここに来るのは五分五分だと判断してたんだよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。だってこの場所ってフランにとって因縁の場所でしょ?」
「そうですね」
「でも、来てくれてありがとう」
「呼ばれたからには来るしかないでしょう。無視するわけにもいきませんし」
大聖女としては私情で「行かない」という選択肢はない。
「一応、言っておくけど。これ嫌がらせじゃないから」
意外だった。
てっきり私への嫌がらせだとばかり思っていたから。
どうやら枢機卿団の嫌がらせではなかったらしい。
ゴールド枢機卿曰く、「元々この土地は古代において神聖な場所だったらしく、勇者召喚にはうってつけの場所だった」らしい。
知らない。
そんな話。
「遥か昔の話だからね。専門家以外は知らないんじゃないかな?」
「あ、そうなんですか」
「そうそう。だから神殿側からしたら勇者召喚にこの場所を使うのは理にかなってるんだよ」
枢機卿団の、引いては神殿側の威信にかけて勇者召喚を成功させなければならない。
それを行う場所も当然、神聖な場所でなければならない。
意気込みからして違うらしい。
「もしかして私が呼ばれたのって……」
「勇者の召喚なんだ。箔付けに大聖女の名前は大いに役に立つよ。因みに僕達枢機卿もその箔付けに一枚噛んでるからね」
「それで列席者が国のトップばかりなんですね」
「そういうこと」
なるほど。
……別にいいんだけど。
「ではこれより勇者召喚の儀を行います」
枢機卿団の一人が声高に宣言した。
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