緋色に堕ちた婚約者

愛世

プロローグ

 初恋とは、恐ろしいくらいに鮮やかで、まばゆく、そして濁りを知らないものだ。



 私――レティシア・プライムの初恋は、四歳の時。相手は二つ歳上の男の子。陽光に照らされて輝く、薄茶色のふわりとした髪。常に柔らかく三日月型に象った、碧色の目。侯爵令息らしく洗練された、立ち居振る舞いと笑顔。

 顔合わせという名の初対面の場。彼は幼子である私に対して片膝をつき、一人前のレディーとして丁寧に扱ってくれた。我が子爵邸の中庭にある噴水前、二人の周囲をきらきらと舞う水飛沫。それはまるで、私達の未来を光の粒が祝福してくれているかのような、素敵な幻想に包まれた出逢いだった。

「はじめまして、レティシア嬢。僕の名前はエルウィン・ブラームス。――君の婚約者だよ」

 今でも忘れられない、ほのかに赤みを帯びた、幼さの残る彼の笑顔。あの時の私達は確かに、濁りのないまっさらな想いをお互いに抱いていた。それはきっと現実になるのだと信じていた。



 そう、それはもう、幼き頃に置いてきた過去の思い出――。

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