第二章
第一話 Dランクへ昇格!
俺の元家族ことフィーレル一家が、王都から派遣された騎士によって連行されてから、今日で1週間が経過した。
あれによって何か変わったなんてことは無く、いつも通り冒険者活動に勤しんでいる。
そんなことを思いながら歩いていたら、冒険者ギルドに到着した。
今日来た理由は依頼を受ける為――ではなく、冒険者ランクをDランクに上げて貰う為に来たのだ。
1週間前、ギルドマスターことジニアスさんに約束して貰ったんだよね。
いやー楽しみだ。
なにせ、Dランク冒険者になったらダンジョンに入れるようになるんだよ。
ここ1週間。ダンジョン攻略に向けて、頑張ってポーションを集めたなぁ……
あの時侯爵邸で手に入れた防具がそこそこいい値段で売れたお陰で、思ったよりも集まったよ。
「ん~変わらないね」
扉を開け、中に入った俺は、雑多で変わらぬ光景を前に、思わずそう口にした。
入った直後は冒険者たちから視線を浴びたが、直ぐに興味を失ったようにその視線は消えていく。
1週間前、ジニアスさんの方から声をかけられたEランク冒険者ってことでそこそこ話題になってしまったが、あれから大人しくしていれば、直ぐに新しい話題によって消えていく。ありがたいことだ。
その後、受付の列に並び、待つこと数分。
自分の番が回って来た俺は、笑顔で出迎える受付嬢に用件を伝える。
「すみません。ランクアップの件です」
そう言って、俺は冒険者カードを取り出すと、受付嬢に手渡す。
それを受付嬢はニコリと笑って受け取ると、どこからともなく取り出した書類を確認する。
「……はい。問題ないですね。ギルドマスターから話も伺ってますし、これよりシンさんはDランクに昇格です。では、冒険者カードの更新をしますので、少々お待ちください」
そう言って、受付嬢は俺の冒険者カードを持って、受付の奥へと行ってしまった。
「……や~Dランクかぁ……」
Dランクに昇格しましたと受付嬢に告げられたことで、ようやく昇格を実感出来た俺は、拳を握りしめながら、喜びに打ち震える。
最初は目立ちたくないから、ランクアップの速度は程々にしようと思っていたんだけどなぁ……
でもまあ、吹聴しなければ、そう噂になることも無いし、前例も多いから、これくらいなら大丈夫だろう。
流石にまた何かやらかして、Cランクに上がるとかだと結構マズそうだけど……それは何としても阻止するとしよう。
Cランクになるのは、最低でもあと2年は先だ。
なんせ、俺はまだ9歳なんだから。
そうして考え事をしながら待つこと3分。
受付嬢が受付に戻って来た。
「お待たせしました。こちらが新しい冒険者カードになります」
そう言って差し出したのは銅色――ではなく、銀色のカード。
そこには俺の冒険者ランクであるDランクと、名前のシンの文字が刻まれていた。
ああ、そういやDランクになると、カードの色が銀色になるんだったな。
因みに、Aランクになると金色、Sランクになると黒色になる。
「ああ、ありがとう」
礼を言って、新しくなった冒険者カードを受け取った俺は、それを直ぐにポケットの中にしまう。
「あと、ギルドマスターからこちらを……」
そう言って、受付嬢がそっと差し出したのは、一通の手紙だった。
中々上質な紙質の封筒で、お偉いさんが書いた手紙だということが一目見てわかる。
「これは……?」
手紙を受け取った俺は、思わずそう問いかける。
だが、受付嬢もよく分かっていないようで、「ちゃんと読んでおけとだけ聞いております……」と答えるだけだった。
内容の予想はつかないが、後で確認しておけばいいだろう。
「分かりました。それでは」
用件を済ませた俺は、その場を離れた。
そして、そのまま冒険者ギルドの外に出た。
「さてと。次はムートンさんの所へ装備を取りに行かないと」
あれから3週間が経過した為、そろそろ装備も完成していることだろう。
金も十分な額を用意しているので、早速受け取りに行くか。
と、その前に……
「ちょっと手紙の内容気になるし、見てみるか」
もし急ぎの用事とかだった場合は、今後の予定を変えなくてはならない可能性だって出てくる訳だし。
念の為、人が居ない路地裏に入ると、壁に寄りかかりながらそっと封を剥がした。
そして、中から1枚の手紙を取り出すと、内容に目を通す。
「ほうほうほう……は~そーゆーね」
手紙を一通り読んだ俺は、深く息を吐いた。
何を隠そう、この手紙の送り主は――レイン殿下なのだ。
いや~なるほど。確かに、来てもおかしくはないよなぁ……
いずれコンタクトを取るって言ってたし。
それで、肝心の内容は――
「20日後にここへ迎えを送るから、分かりやすい場所に居て欲しい……か」
要約すると、そんな感じだ。
その後王都へ転移で送られ、色々と話す……って感じ。
まあ、王侯貴族の密談的なものとしてはよくあるやつだ。
「20日後なら、予定を変更する必要はなさそうだな」
ダンジョン探索も、俺とスライムたちだけで行う都合上、物資的問題で一度にそう長くは潜れない。予定では、4泊5日の探索を何度か行い、慣れてきたらもう少し伸ばす……といった感じだ。
その合間に、密談の予定が入っただけのこと。
「さてと。見るもの見たし、ムートンさんの所へ行かないと」
手紙を再び封筒の中に戻し、リュックサックの中に入れた俺は、今度こそムートンさんの所へ向かって歩き出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます