幻想

「プラ……グ」

 ペペロは、プラグに寄りかかるように倒れこむ。

「!?」

 神父とプラグがそれに気づいてかけよると、どうやら、プラグほどではないにせよ

、腹部を殴打されてあざのようになっていた。グイン神父はいった。

「君が……やったのか」

 しばしの沈黙。プラグは、力を使ったことを隠したかった。

「まあいい、今は彼女を治療しないと、すぐに医務室に運ぼう」

 そして奇妙にも、犯人と疑われるプラグと、神父はすぐさま教会にもどった。


 その夜。プラグはペペロのいた隣の牢に収容された。ペペロは今医務室で治療をうけている。疲れと達成感から、プラグはそこで妙な夢をみるのだ。自分の背中からは青い羽が生え、人々がそれを美しいと見上げている。星空を背景に、家々尾をとびまわり、ついに宙にとびあがる。何にもしばられることもない、誰も気づ付けることもない。そして自分が見下ろすと、マルグリッドとエリサが微笑んでいる。

「ハッ……」

 気づくと自分は腹部に包帯をまかれ、牢の中で横になっていた。その現実が重苦しく煩わしく、また眠りに入った。その手には、シスターアイリーンの人形が握られていた。


 その一方、また別の場所で、アイリーンはある男の前に礼儀正しく膝をついた姿勢で頭を下げる。

「ヴァルシュヴァル卿、いかがなさいましょう」

「……」

 ヴァルシュヴァル卿は、白髪にスーツをきて、胸をはりながら、月を見上げていった。

「その孤児院の子供たちを”青の夜鳥”の犯人にしてもいいだろう」

 そして、ククク。と笑い声をあげた。アイリーンは横に目をやる、と壊れたオートマタが壁にめりこんで、今、のそりと壁から抜け出した所だった。


 プラグが目を覚ますと、事態は一転していた。アイリーンはグイン神父にとがめられ、エリサはすべての人形を取り戻したらしかった。エリサは自分のもとに一目散にいって、感謝をいった。

「でも……人形が一体」

「??一体くらいいじゃないか」

「でも、あれは違う人形なの……アイリーンじゃなくて」

「??」

 二人で話していると、扉をあける音がした、こつこつと足音が違づいてきた。

「アイリーンかな?」

 だがプラグにはわかっていた。機器なじみのある綺麗な足音。それは間違いない。あの人のものだった。

「マルグリッド!!」

 その姿をみると、エリサはすぐに彼女にとびづいた。だがしばらく話をしたあと、マルグリッドは、“二人にして”というと、エリサはその部屋からでていった。


「……」

 マルグリッドは牢やの中のプラグをじーっとみた。

「何をしたの?」

「いや……何も、約束は破ってない」

「本当?あなたが約束を破ったらここにいられなくなることだってあるのよ」

 その目はどこかうつろでアイリーンの非にならないほど冷徹な氷の目だった。

「本当だ……自分勝手な暴力なんてふるってない」

「……ふっ」

 ふと力がぬけたようにいつものマルグリッドの表情にもどると、牢の中に手を入れ、彼女はプラグの頭をなでた。

「ならよし!」

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