碧眼のマリオネット

ボウガ

プロローグ

 ヴァルツ大陸西岸ローグン半島アルベリア領、オートマタ・アーマー憲兵が街を巡回する。この世界のオートマタは魔導人形の事だ

 “人形は人の代弁者なり”

 それは、あらゆる娯楽がまだ発達せず、それよりもオートマタに人々の興味と好奇心が傾く世界の物語。人形は人々の生活の根底にあった。


 ―6年前 プラグ・レートン8歳のとき、地元で有名な“黒猫”というあだ名のある悪ガキだった。孤児であり、モノを盗んだり、人を騙すのはあたりまえ、幼いながらも人を殴ったり、脅したりもした。実際彼には力があった。子供には少しばかり強烈な力が。


 この世界の人間は、誰もが魔導力をもつ。生命の根幹にながれ、それを補佐する役割だが、この世界では魔法は発達せず、魔導力のほとんどは機械的な補助を用いて有効活用された。すなわち、オートマタである。幼い彼は原始的な魔導力を、筋力の補助としてつかったが。こうした使い方は主に“外道”“野蛮”といわれるのだ。


 だが彼には怒りしかなかった。

《ドスッ》

腹部を殴られる男性

「ひ、ひいぃ!!やめ、やめてくれ」

「やめねえな?お前が“犯人”か確かめるまでは、俺は“親の仇”を探しているんだ、ある日平凡な家庭に分け入って、それまでのすべてを破壊した」

《ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ》

 殴っても殴っても、殴る手を止めない。その空虚を埋めるのは“暴力”でしかなかった。その時までは

「お前、どうしてそんな風に、赤の他人に怒りをぶつけられるんだ」

「俺が、赤の他人にそうされたからだ!!」

 男の嘆きに、プラグはより一層こぶしを強く振り上げた。その手が振り下ろされる瞬間、横道から気配がした。

「おやめなさい、あなた」

「なんだあんた」

「私はシスター、シスターアリリナ、“ルナ教”のシスターです」

「何ぃ?その何とか教が何のようだ!!」

「あなたに、更生の機会をあたえましょう」

 その言葉をきいたとき、プラグの頭には怒りしかわいてこなかった。この国の文化、領主の態度、すべてが気に入らない。上から目線で、ずうずうしいったらない。

「ぶっ殺す!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る