第35話 上位独占

 ブルース先生は我に返って、自己紹介を再開し次席の生徒に声をかけた。


「あ、あぁ、そうだな次は次席のアナスタシアだ」


 アナは立ち上がると、右手を胸に当てながら私に対して一礼をしてから、自己紹介を始めた。


「私はアナスタシア.ルミナスと申します。ルミナスの森より参りました。武器はレイピアを使用します。火属性と土属性の魔法を使います。アリス様の従者をしている半吸血鬼ハーフヴァンパイアです。姉ほどではありませんがアリス様の侮辱は許しません」

半吸血鬼ハーフヴァンパイアだと?日光や聖銀を苦としないということか。……ふむ、次は参席のゼラーシュカだな」


 ゼシカは立ち上がると、両手を胸に当てながらアナと同じように私へ一礼をしてから、自己紹介を始めた。


「ゼラーシュカ.ルミナスと申します。ルミナスの森より参りました。弓使いで風属性と水属性の魔法を使います。我が主であるアリス様の筆頭従者を務めるハーフエルフです。先程アナが伝えましたがアリス様への侮辱は許しません。うっかり殺すかも知れないのでお許しを」

「風属性と水属性だとエンシェントエルフの家系なのか?それから、うっかりで殺すなんて絶対にダメだから!次は肆席リューネブルックだ」


 リューネも姉2人と同じように立ち上がると、左手を胸に充ててから私に一礼をしてから口を開いた。


「リューネブルック.ルミナスです。ルミナスの森から来ました。大剣を使います。火属性の魔法が得意です。アリス様の従者を務める竜人ドラゴノイドで、アリス様の敵は問答無用で消し炭にします」


竜人ドラゴノイドだと?アリスの従者は全員が希少種族なのか……、ルミナスの森とは希少種属の溜まり場なのか?それから、消し炭にするなよ!」


 ブルース先生が『希少種族の溜まり場』なんて言うから、ゼシカはその言葉に反応して答えた。


「アリス様を神と崇める者のみが、住むことを許されるこの世の理想郷ユートピアなだけです」

「私を崇めるとか全然ないからね?みんなで楽しく暮らせる場所なだけだからね!」


 ゼシカがぶっ飛んだことを言うので、私は全力で否定した。ただ、新入生の首席から肆席までがルミナスの森の出身者で、しかも4人とも激レア種族な訳だから、そのように思われちゃっても仕方ないかな?


§ブルースの視点§

 今年の新入生はおかしい。平民が十傑に入ったことなど1度もなかったのに、首席から肆席までの上位を平民が独占していた。しかも、首席のアリスは3人の主だという。いや、主というより神のように崇められていた。


 平民ということで絡む連中が多いのに、従者達はアリスに対して侮辱した者を許さないと言った。『うっかり殺す』や『消し炭にする』なんて過激な内容に冷や汗が流れる。従者達が過激な行動を取らないように、アリス達を見張らなければならないな。あの3人の実力を考えると、生徒なんて簡単に殺してしまいそうで冗談では済まないからな。

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