第19話
皆が着替え終わって、既に全員集合している。
私はどうやら最後らしい。
「あっ。渚さん。」
白いワンピースの水着に長い髪を二股のお下げにまとめた小動物系少女の雪が、小さい身体を大きく使って手を思いっきり振ってる。
かわいい。
「おまたせ。」
「遅いじゃない。こっちはもう準備運動終わったわよ。」
「ごめんごめん。」
セーラー風レースアップの水着を着て、サイドテールからポニーテールに変更したツンデレ?系少女の玲。
少しストレッチをしつつ私を気にかける優しさは正直嬉しい。
「待たせたね。どうかな?。楓。」
「優勝。」
なんだそれ。
苦笑いで誤魔化したけど、なんだそれ。
はたして楓は何を採点していたのだろうか……。
……。
いまは考えるのをよそう。
いやーほんと。
私達と従業員以外、ほんとーに人っ子一人いないな。
こんなに静かで寂しいプールはいつ以来だろうか。
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「渚!。大丈夫、渚!。」
「もう大丈夫だよ。渚。ここ貸し切ったから、もう心配しなくていいよ。」
「……そうだね。ありがとう。楓。」
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流れるプールにただただ、流されるまま漂う私。
こうも人がいないと途端にやる気が出ない……。
「渚。少しいい?。」
「どうしたの。玲。」
「最近さぁ……。楓の様子がおかしくない?。いや、元々おかしいだけどさ。なんか、そのおかしさとは違う……何かが……。」
そうだよね。
それは私も思ってる。
楓は世界の中心にいながら、その世界の中心に楓はいない。
彼女が中心の世界を仮に地球としたら……。
それとは別に太陽のような存在がいる。
おそらく私だ。
「私達が悩んでもしょうがないじゃない?。これは楓の問題なんだし。」
「それはそうだけど……。でも―。」
「お願い。」
「わかったわよ。でも、私にも限界があるからね!。」
わかってる。
これが異常だってこと。
それでも私は楓の隣に……。
ウォータースライダーの高台で呼んでる楓と雪に誘われて私と玲も高台に向かった。
「このウォータースライダーはなんと!。2人1組で浮き輪に乗って滑るタイプだそうです!。」
解説ありがとう。
これはつまりあれだ。「今度の創作百合同人誌の資料のためにいろんな組み合わせで滑って欲しいです。」って本音がオブラートを貫通して聞こえてくる。
「良いけど。組み合わせどうするの?。」
「そうよ。だいたい組み合わせだって好き嫌いがあるでしょ。」
それはそう。
ということで指差しでとりあえず滑りたい相手を決めてもらうことにした。
「なんでー。」
「そりゃあそうでしょ……。」
「モテモテですね。な・ぎ・さ・さん……。」
「あははは……。はぁ……。」
結果は、渚→楓、楓→渚、玲→渚、雪→渚、となってしまった……。
いつの間にか私はハーレムを作っていたようだ。
「えっと……。どうします?。」
「こうなったら。定番のあれでしょ!。」
「あれ?。」「あれ?。」「あれ?。」
つまりくじ引きである。
まあこうなることは想定しているし、恋愛/ラブコメだと定番イベントだが……。
だが、登場人物があまりにも少なすぎる。
私含めて4人だぞ。
それも2人1組のウォータースライダー……。
はぁ……。結果を祈ろう……。
「で、こうなったと。」
「よろしくお願いします。渚さん。」
「雪。今からでもそこ変わって〜。私の渚で最初に滑られないで〜。」
「はいはーい。邪魔になるので離れましょうね。」
「離して玲。私は―。」
「御託はここまでね〜。じゃあ、お2人で楽しんできてね。」
あはは……。
これは後でお詫びしないとな……。
それからは玲とも滑って、そして楓と日が暮れるまで滑った。
2桁ぐらいは滑ったはず……。
従業員さんがすっごく引いてたけどね……。
けど、たまにはこういうのもいいか……。
そんな夏休み序盤を私達は過ごした。
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