第11話 学食と彼女
あれから徳間は、すぐに城郭サークルを退部し、逆ギレしたその先輩からの通知を全てブロックした。
何故、僕がそんなことを知っているか!?というと、それは今日も徳間と兼田さんの三人で学食を食べているからだ。
今まで僕は、だいたいクラスの男子達と大学の近くにある町中華やコンビニのおにぎりとかサンドウィッチで昼を済ませることが多かったのに、「私、友達いなくなったから、付き合ってよ」と徳間に強くせがまれてしまい、こうして学食のテーブルでランチを共にすることが日課となっていた。
正直、僕をうらやむクラスメイトも多く、紹介しろ、ライン聞いてくれなど色々と本当に鬱陶しい。だが、今日も僕は、この可愛らしい女子二人と一緒に、たぬき蕎麦を食べているって訳だ。
「高井くん、この前、由里子と二人っきりで、すごく静かでそして、暗くて、なんかロマンチックな場所に行ったらしいじゃん?」
兼田さんがなんだかわざとらしく脚色して周りにも聞こえるような声で話しかける。
「ばかっ。大きな声で何言ってるんだよ。ほら、徳間もちゃんと説明しろよ」
徳間は、「えっ。それ、本当のことだもん〜」なんて言いながら笑っている。
もう、こいつらには適わないな…。
僕は、「はいはい。大きなベットがある静かな場所で、バスユニットも広くて、徳間、ほんとに気持ち良かったよな〜」と揶揄ってやる。
「ば、ばかっ。高井くん、何、言ってるの。私達、まだお付き合いしてないんだし、そんなことはまだ駄目でしょっ」
急に頬を赤くする徳間をみながら兼田さんが指を指しながら「あっ〜〜〜」と声を上げる。
「ほら、次、講義の時間だよ。行こう」と僕は、トレーを持つと返却口に向かって歩き出した。
「もう、待ってよー、私達も同じ講義だってば」徳間達も僕に続いて歩いてくる。
その時、僕は、学食の入口にあるチケット購入機の前で、カバンからサイフを取り出そうとして、小銭を盛大にばら撒いていた女性に気づいた。
「笠原さん!」
僕は、自分が持ってるトレーを返却口に戻すと、急ぎ彼女の方へと走り、まだ転がっている十円玉や百円玉などを次々と拾う。
「はい。これ。全部拾えたかどかわからないけど」
僕は、笠原さんに十数枚の小銭を渡す。
彼女はと言えば、ばら撒いた瞬間、身動き一つ取れぬまままだ固まっていたようだが、漸くその表情がほぐれ、「高井くん、ごめんなさい。ありがとう。ごめんね」と平謝りする。
「チケットなにするの?」
ふと彼女を見ると、両手に荷物を持っており、サイフを開くのも大変そうだ。
だから、僕は、彼女を先にテーブルに座らせてから、僕が出来上がった食事を持っていけばいいかと思っていた。
「高井くん、いいよ。私に構わないで。ほら、彼女達、待ってるよ」
彼女は、いつもより乾いた声でそういうと右足を引きずりながら、学食の奥の方へと歩き出した。
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