第11話 みはまの朝

 翌朝、美浜学園の広大な甲板には、早朝から生徒たちの活気が満ち溢れていた。昨日のカッター競技会の興奮と、ロボコン初優勝の喜びがまだ冷めやらぬ中、今日は年に一度の甲板清掃の日だ。

 瀬戸内は、昨夕防衛大学校から持ち帰った塗料をヘリポートから運び出すと、誇らしげに仲間に見せた。「ほら見ろ!特別に分けてもらったんだ。これでみはまの甲板もピカピカになるぞ!」

 他の生徒たちも、デッキブラシや雑巾を手に、思い思いの場所に散っていく。普段は騒がしい学園内も、この日ばかりは一致団結して清掃作業に取り組む。海風が心地よく吹き抜け、遠くには水平線が広がっている。

 作業の合間には、昨日のカッター競技会の話題で持ちきりだった。「最後の追い上げ、すごかったな!」「ほんの少しの差だったけど、来年こそは絶対一番獲ろうぜ!」と、互いに健闘を称え合い、来年のリベンジを誓い合った。防衛大学校の生徒たちとの交流も実り多いものだったようで、連絡先を交換した者も多く、夏には合同で訓練をすることも決まったらしい。

 一方、ロボコンチームのメンバーは、優勝トロフィーを大切そうに抱えながら甲板の隅で休憩していた。「まさか、本当に優勝できるなんて…」「練習は本当に大変だったけど、諦めずにやってきてよかった!」と、喜びを分かち合っていた。彼らの努力とチームワークが、美浜学園に新たな栄光をもたらしたのだ。

 太陽が徐々に高度を上げていくにつれて、甲板はみるみるうちに綺麗になっていった。ペンキが塗り直された場所は鮮やかな色彩を取り戻し、磨き上げられた床は太陽の光を反射して輝いている。

 昼過ぎには清掃が終わり、生徒たちは達成感に満ちた表情で食堂へと向かった。瀬戸内は、綺麗になった甲板を見渡しながら満足そうに頷いた。「よし、これでまた気持ちよく訓練に励めるぞ!」

 午後の授業が始まるまでの間、生徒たちはそれぞれの時間を過ごした。カッター競技会のメンバーは、防衛大学校の生徒たちに手紙を書く者、ロボコンチームのメンバーは、次の大会に向けて新たなアイデアを練る者、そして明日の訓練に備えて体を休める者もいた。

 夕暮れ時、茜色の空の下、美浜学園の生徒たちは今日も充実した一日を終えようとしていた。カッター競技会での友情、ロボコンでの栄光、そしてみんなで力を合わせた甲板清掃。様々な経験を通して、彼らはまた一歩、成長を遂げたのだ。明日はどんな一日が待っているのだろうか。彼らの青春は、これからも輝き続けるだろう。

 

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