第8話



「貴女の周りをウロウロしていたのは、他にも理由があるの。」



 幸せそうにお茶菓子を頬張りながら、オリヴィア様は言った。



「他の理由?」



「ガブリエル、それは断った筈だ。」



「リシャール、貴方に言ってないわ。アニエス、あのね貴女にお願いがあるの。」



 眩しいほど美しく笑う彼女のお願いを断るなんて誰が出来るだろうか。







◇◇◇◇






「「メイク師?」」



 聞き慣れない言葉に私もクロエも目をぱちくりとさせた。オリヴィア様の説明では他国では女性へ化粧を施す職業があると言う。



 あのお茶会の時、オリヴィア様からのお願い事とは「アニエスのお誕生日パーティーの時に化粧をさせてほしい。」というものだった。



 私は気が進まないけれどそこまで頼むなら……と了承した。だがリシャール様が他の男性と二人きりになるなんて駄目だと甘い言葉を吐き、私は頬を染めた。



 そんな私たちを尻目に「じゃあクロエに同席してもらいましょ!」とオリヴィア様がテキパキと段取りを組み、あっという間に誕生日当日となった。




 彼女がやんちゃ坊主だったガブリエルだとクロエへ伝えると驚愕していたが、すぐ調子を取り戻し「貴女のせいでアニエスが嫌な思いをしたのよ!昔も今も!」と説教を始めた。オリヴィア様は神妙に聞いた後、口を開いた。


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