第3話



 それから、リシャール様とその美女を何度か見掛けた。学園では見掛けないので彼女は学生ではないのだろう。見掛けるのは専らショッピング中だ。リシャール様と彼女の会話が盛り上がっていることが伝わり、私の心はじくりと傷んだ。見掛ける度に美女の方から視線を感じるので、わざと鉢合わせるようにしているのではと訝しんでしまう。



 だが私の疑いは当たっていたようだ。



 ある日、クロエと二人でお茶に向かっているとまたあの美女を見掛けた。珍しく美女は一人でリシャール様は見当たらない。彼女はずんずんと大股で私たちに近づき、あまりの迫力に私はおろかクロエも怯んでしまった。私たちが言葉を失っている間に、彼女は私の顎をグイッと掴むと私の顔を隅々まで近距離で見つめた後……。







「貴女って、全然可愛くないわね。」



 そう吐き捨て、去って行った。少し時間を置いた後、調子を取り戻したクロエはまた激怒していたけれど私はいつまでも呆然と立ち尽くしていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る