第46話 作戦決行 3

 俺とメルさんは潜入を開始する。


「屋敷の外に冒険者は15人います。その内、外を徘徊してるのが11人、正面玄関に2人、西、東に作られた扉に1人ずついます」


「西、もしくは東の扉から潜入するしかなさそうね。その時、扉を守ってる冒険者を無力化する必要があるけど……」


「それは俺がなんとかします」


「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ」


 とのことで方針が決まる。


「東と西、どっちから潜入しますか?」


「そうね。なら東から潜入するわよ」


「わかりました」


 そう言って俺たちは5メートル以上の高さがある塀をジャンプで越える。


 超えた先に屋敷を守っている冒険者がいないことは賢者さんで確認済みだ。


 そして、東にある扉まで移動する。


 賢者さんがいれば冒険者がどこにいるかわかっているので、俺たちは外を徘徊している冒険者に出会うことなく、扉まで数メートルというところに辿り着く。


「ははっ、油断してますね」


 扉を守っている冒険者は欠伸をしており、剣をいつでも抜けるような体勢ではない。


「ありがたいことね。カミト、お願い」


「任されました!」


 俺は俊敏ステータス3万越えを遺憾なく発揮し、一瞬で扉を守っている冒険者の背後に回る。


「っ!」


 油断していた冒険者は俺の存在に気がついたのか、緩んでいた顔を引き締める。


「今頃お目覚めかよ。遅すぎる」


 しかし、俺の存在を捉えることはできず…


「ぐっ!」


 俺は首の後ろにある急所を的確に攻撃し、気絶させる。


「すごい速さね。さすがだわ」


「いえいえ。これくらい楽勝ですよ」


 そう言いつつ、俺は気絶させた冒険者をバレないところに隠す。


 そして2人で屋敷内に侵入する。


「屋敷内には9人の冒険者と執事やメイドと思われる人がたくさんいます。さすがに誰にも会わずに証拠品の確保と囚われた女性たちの救出は難しいと思います。特に、囚われた21人の女性と共に屋敷を脱出する時は」


「その通りよ。だから途中でメイド服を調達する予定よ。カミトの巾着袋に入れることができれば移動する時に邪魔にはならないわ。それと、もしメイドたちに見つかって騒がれた時、冒険者を呼ばれると困るから、屋敷内にいる冒険者は見つけ次第無力化するわ」


「なるほどです」


 とのことで、まずは証拠品の回収とメイド服の回収、冒険者の無力化を図る。


 俺たちは賢者さんのマップを頼りに冒険者の位置やメイドたちの位置を確認しつつ、屋敷を探し回る。


 そして30分程度の時間が経過する。


「メイド服の確保と4人の冒険者を無力化に成功しました。あとは証拠品だけですね」


「えぇ。カミト、場所はわかるの?」


「はい。2人の冒険者が守っている部屋があるので、おそらくその部屋だと思います」


「ならその部屋に向かいましょう」


 俺とメルさんは冒険者2人が守っている部屋に向かう。


「メルさん。絶対ここが宰相の部屋ですよ」


「そうね。自己主張が激しいわね」


 そこには金ピカの扉と、自分の銅像が飾られていた。


「カミト、お願い」


「了解です!」


 俺はメルさんに返事をして、一瞬で冒険者2人を気絶させる。


「ふぅ。こんなもんですね」


「ありがとう。さて、いよいよ潜入だけど……まぁ、鍵がかかってるわよね」


 部屋を開けようとするが、案の定、鍵がかかっており、扉が開かない。


「どうしますか?壊しますか?」


「いえ、ここは私の出番ね」


 そう言ってメルさんは鍵穴を確認する。


「よし。これなら……」


 そう呟いてメルさんが得意の氷魔法を発動させる。


 右の手のひらを上にして魔法を唱えると、徐々に氷の鍵が現れる。


「おぉ。すごいですね」


 魔法で小さい物を作るのは難しい。


 しかも鍵となれば細部まで調整しないといけない。


 そのため、かなりの魔法コントロールが必要となるが、桁外れの魔法コントロールを披露するメルさんはあっという間に完成させる。


「こ、これくらいできて当然よ」


 そんな言葉と共にメルさんが頬を染める。


 そして完成した鍵を使い“ガチャ”っと宰相の部屋を開けて部屋に入る。


 その際、気絶させた冒険者2人を部屋の中に連れ込む。


「さて、ここから証拠品探しよ。手分けして探しましょう」


 俺とメルさんは手分けして証拠品を探す。


「あ、ありました!息子の悪事を宰相が握りつぶした証拠が!」


 俺は宰相が息子の悪事をもみ消すために行った金銭のやり取りを見つける。


 多額な額が悪事に加担した人に送られてており、言い逃れはできない。


 しかも、この屋敷にいる冒険者たちが悪事に加担した証拠となる物を混ざっていた。


 そのため俺はメルさんに声をかけるが、メルさんからの返事はない。


「メルさん?」


 俺は不思議に思いメルさんを見ると、一枚の資料を持って固まっていた。


「う、嘘でしょ……」


 その反応が気になった俺はメルさんが持っている資料を横から見る。


「なっ!」


 そこには、宰相が王都を乗っ取る計画が書かれていた。




『もうすぐで私の息子、ワルモチが第一王女であるリーシャと結婚することになる。結婚後、リーシャには子を孕んでもらい、産まれた直後にリーシャと産まれた子供を殺す。そして、ワルモチが連れ去った女との間にできた子供をリーシャが産んだ子供にする。その後、第二王女であるレオノーラも殺せば、ヴェール家の血筋は途絶え、俺の一族が王都を支配できる。協力した暁にはお前に幹部の位を与えよう』


ワルダック宰相より




「これは言い逃れできない証拠ですね。リーシャ様たちの殺害予告まで書いてますよ」


「えぇ。しかもご丁寧に自分のサインまで書いてるわ。そして、この作戦に関与した貴族の名前も」


「まさか自分の血筋を王都のトップにする計画を立ててたなんて」


「だから宰相は息子を売らず、悪事を揉み消し続けたのね。宰相にとって息子がいなくなればリーシャとの結婚がなくなり、計画自体がダメになってしまうから」


 俺とメルさんは頷き合う。


「これは急いで王宮へ戻った方が良さそうね」


「はい!囚われている女性たちを救出して王宮へ帰りましょう!」


 俺たちは次の行動へ移った。

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