2章 王都編

第23話 王都へ 1

【2章開始】


「クレアー!そろそろ出発するぞー!」


「はーい!」


 俺は荷物をまとめたカバンを持って玄関でクレアを呼ぶ。


「準備万端か?」


「うん!私の荷物も完璧だよ!」


 クレアは俺よりも少し大きいカバンを1つ持って玄関に現れる。


 元々貧乏で節約ばかりしてた俺たちに持っていく荷物は少なく、必要な物は王都で調達する予定なので、2人ともカバン1つで収まった。


「じゃあ、別れの挨拶だ」


 俺はクレアに声をかけ、クレアと一緒に部屋に向けて頭を下げる。


「3年間お世話になりました!」


「お世話になりました!」


 そして、感謝の気持ちを伝える。


 10秒ほど頭を下げた俺たちは頭を上げ、部屋を出る。


 すると、外でアムネシアさんが待っていた。


「2人とも、身体には気をつけるんだよ」


「はい!アムネシアさんもお身体に気をつけてください!」


「えぇ。それと今日でお別れになるわけじゃないからね。だからカミトくん、クレアちゃん。行ってらっしゃい。また帰ってきてね」


「っ!はい!必ず!」


「行ってきます!」


「2人とも、行ってらっしゃい」


 俺たちはアムネシアさんに見送られ、ソフィアさんたちとの集合場所を目指した。





 ソフィアさんとソラさんが待つ集合場所へ到着する。


 そこには既にソフィアさんとソラさん、そして何故か大荷物を持ったルーリエさんがいた。


「おはようございます。すみません、少し遅れてしまいました」


「これくらい気にするな」


「うんうん!会長の言う通りだよ!」


「長い時間待っていたわけではありませんので、気にしないでください!」


 ソフィアさんの言葉にソラさんとルーリエさんが同意する。


「えーっと……もしかしてルーリエさんは俺たちと一緒に王都へ行くんですか?」


「はい!同行……というか私も王都へ移住することになりました!」


「え、リブロ支部の受付は大丈夫なんですか?」


「大丈夫です!」


 自信満々にルーリエさんが答える。


 すると、俺たちの会話を黙って聞いていたソフィアさんが付け足すように話し始める。


「元々ルーリエはカミトくんをサポートするために私が王都から派遣した受付嬢だからな。以前いた職場に戻る形になるだけだ」


「あ、なるほど」


「まぁ、私の予定ではこのままルーリエにはリブロ支部で働いてもらう予定だったんだが『カミトさんが王都へ行くなら私も王都へ行きます!だって私はカミトさんをサポートするのが役目ですから!』と言って聞かなかったから仕方なく王都に帰ることを許可した」


「会長!そんなことは言わなくていいんです!」


 ソフィアさんの発言を聞いて、慌てるルーリエさん。


「違いますからね!私がカミトさんの近くに居たいとかではなくて、カミトさんには私のサポートが必要かなって思ったからついて行くだけです!私情なんて入ってませんからね!」


「わかってますよ。俺はまだまだ冒険者として未熟だからサポートしてくれるんですよね」


「………少しは私の言葉を疑ってもいいんですよ?」


「疑う?俺をサポート云々は嘘で、本当の理由は王都に帰りたかったとか?」


「………はぁ。いえ、なんでもありません」


 何故か肩を落としてガックリするルーリエさん。


「さすがお兄ちゃん!天才的な迷推理だよ!」


「お、マジで。クレアから名推理って言われちゃったよ。俺、名探偵になれるかな?」


「なれるわけねぇだろ」


「………」


 なかなか厳しいツッコミをソフィアさんからいただく。


 すると肩を落としていたルーリエさんが「こほんっ!」と大きく咳払いをする。


 そして俺の隣にいるクレアへ話しかける。


「初めまして。私、リブロ支部で受付嬢を務めていましたルーリエと申します。貴女がカミトさんの妹のクレアちゃん?」


「あ、はい!私はお兄ちゃんの妹のクレアです!よろしくお願いします!」


「よろしくお願いしますね、クレアちゃん」


 初めてルーリエさんに出会ったクレアが自己紹介をする。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」


「ん?」


 すると何故かクレアが俺を手招きする。


「すごい美人さんだよ。しかも胸が大きい。ソラさんとは違ったタイプの美人さんだね」


「そうだな。ソラさんは可愛い系の美少女だけど、ルーリエさんは綺麗系の美女だからな」


 そう返答すると同時にクレアの対応に安堵する。


(リブロ支部の受付嬢と聞いてルーリエさんと仲良くしない可能性があると思ったが杞憂だったか)


 以前、俺がリブロ支部でイジメられていることを包み隠さず話した時に受付嬢の女の子はみんな良い人だということを伝えていたため、リブロ支部で働いていたルーリエさんに悪い印象を持っていないようだ。


「私、ルーリエさんとも仲良くなれそうだよ!」


「お、それは良かった。ルーリエさんは幾度となく俺を助けてくれた優しい女性だからな。きっとクレアのことも助けてくれるぞ」


 クレアの発言を嬉しく思いつつ、最後にソフィアさんを紹介する。


「クレア。もう気づいているとは思うが、ダンジョン協会で会長を務めているソフィアさんだ」


「クレアです!ソフィアさんのことはお兄ちゃんから聞いてます!お兄ちゃんを助けていただき、ありがとうございます!」


「気にするな。むしろ助けるのが遅くなったくらいだ。これからはカミトくんのことをしっかりとサポートするから、安心してくれ」


「はい!よろしくお願いします!」


 そんな感じで簡単にソフィアさんとクレアが自己紹介を行う。


「よし。お互い自己紹介も終わったようだし、今から王都を目指して出発するぞ」


 そして俺たちは王都へ向けて出発した。

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