第21話 セリアさん

 俺の驚く声が支部内に響き渡る。


「あと、リブロでやることは無くなったから明日王都へ帰る予定だ。カミトくんも明日リブロを発つことになるが移住の準備はできてるか?」


「準備はできてますが……マジで俺、S級冒険者になるんですか?」


「当たり前だ。そのステータスはS級冒険者レベルなんだ。胸を張ってS級冒険者になってくれ」


 どうやらソフィアさんの意思は固いようだ。


(まぁ、S級モンスターのドラゴンを倒すことはできたし、ステータスは化け物と言われてもおかしくないステータスなんだ)


 そう思い、S級冒険者になることを拒まず受け入れる。


「ソラは『希望の花』を手に入れることができたか?」


「はい!カミトくんが1つ譲ってくれました!」


 そう言ってソラさんは『希望の花』をソフィアさんに見せる。


「ホントか!?これでセリアを救うことができるぞ!ありがとう、カミトくん!」


「いえいえ!これでソラさんのリーダーを救ってください!」


『希望の花』を見つけたことにソフィアさんからも感謝される。


「ならリブロにいる理由はないな。ソラも明日帰るぞ」


「はい!帰りの護衛も任せてください!」


「えっ!ソラさんの護衛相手ってソフィアさんだったの!?」


「あぁ。アタシに護衛なんか必要ないが、念のためにソラとセリアにお願いしてたんだ」


 ソラさんはある人の護衛でリブロに来たと言っていた。


(まさか護衛相手がソフィアさんだったとは……)


 そのことに驚く。


「本当はセリアも一緒に護衛してくれるはずだったんだが、王都出発の数日前にA級モンスターであるドクサソリの攻撃でアタシの護衛なんかできる状態じゃなくなってな。護衛がソラだけになったんだ」


「あ、そうなん……あれ?なんかこの話、アムネシアさんから聞いた話に似てるぞ。孫がドクサソリの攻撃で動ける状態じゃないって部分が……」


 俺はふと思ったことを口にする。


「アムネシアさん!?それって多分、リブロにいるセリアさんの祖母だよ!」


 すると、俺の話を聞いてソラさんが声を上げる。


 詳しく聞くと、今回、ソフィアさんが王都からリブロに来ることとなり、強い冒険者の中から護衛してくれる人を募った。


 その時、A級冒険者であるセリアさんがリブロにいる祖母に会うことができるからと言って護衛を引き受け、セリアさんとパーティーを組んでいるソラさんも同行する予定だった。


 しかし、セリアさんがドクサソリの攻撃によって寝たきりとなり、セリアさん抜きでリブロに来たとのこと。


「私、セリアさんからアムネシアさんのことを聞いてたんだ!だから、カミトくんが言うアムネシアさんはセリアさんのお婆ちゃんだと思う!」


「えーっと……ってことは、アムネシアさんのお孫さんはソラさんのリーダーで、アムネシアさんとソラさんが助けたい人はセリアさんだったと」


「そうなるね!」


「………」


(そんな偶然、普通なくね?)


 そんなことを思う。


「なら、ソラさんに渡した『希望の花』だけで物事が解決しそうだな」


「まだセリアさんの祖母が、カミトくんの話に出てくるアムネシアさんかはわからないけどね」


「あ、そっか。確認しないとダメか」


「うん。だから私もアムネシアさんの下へカミトくんと一緒に行っていいかな?」


「いいけど……俺だけでもいいんだぞ?」


「ううん。私のせいでセリアさんは今も寝込んでるから、セリアさんのお婆ちゃんなら一言謝りに行かないと」


 ソラさんの瞳から義務感のようなものを感じる。


「そっか。ならさっそく会いに行こうか。明日、俺も王都へ出発することになりそうだから」


「うん!」


 俺はソラさんに確認を取り、2人でアムネシアさんのもとへ向かうこととなる。


「2人とも、明日の午前中にはリブロを出発する予定だから、そのつもりで準備しててくれ」


「「分かりました!」」


 俺とソラさんはソフィアさんへ返事をしてリブロ支部を出る。


「カミトくんは会長と一緒に王都を目指す予定だったんだね!」


「あぁ。だからソラさんと一緒に王都へ旅することになりそうだな」


「うん!楽しい旅になりそうだよ!」


 そんな会話をしつつ、俺はボロアパートを目指す。


「着いたぞ。ここがアムネシアさんと俺が住んでる家だ」


「へ、へー!な、なかなか趣きのあるアパートだね!」


「無理して褒めなくていいぞ」


 俺は着いて早々、ソラさんへアパートを紹介する。


「っと、そうだ。ちょっと待ってくれ。アムネシアさんに会う前にソラさんへ紹介したい人がいるんだ」


「……?わかったー!」


 首を傾げつつも返事をしたソラさんを少しだけ待たせ、俺は家に入る。


 そしてクレアを呼ぶ。


「クレアー!アムネシアさんからのお願いの素材を手に入れたから報告に行くぞー!」


「はーい!」


 俺が玄関から呼ぶと、すぐに返事をしたクレアが飛んでくる。


「それとクレアに会わせたい人がいるんだ。ちょっと会ってもらってもいいか?」


「うん!」


 俺はクレアに確認を取り、外で待っているソラさんのもとへ、クレアと共に行く。


「えっ!めっちゃ可愛い女の子が出てきた!」


 すると、何故か慌て出すソラさん。


 そんなソラさんに首を傾げつつ、俺はクレアを紹介する。


「ソラさん、紹介するよ。こちら……」


「も、もしかして、カミトくんの恋人……とか?」


「………はい?」


 俺がクレアを紹介しようとした時、ソラさんから的外れな返答をもらう。


「そ、そうだよね。カミトくんってカッコいいし優しいから恋人がいてもおかしくないよね。しかも巨乳で私より可愛いし……はぁ、私の胸はいつ大きくなるんだろ……」


 そして盛大に勘違いしているソラさんは、自分の胸とクレアの胸を見比べて、ため息をつく。


「あのぉ、ソラさん?クレアは妹なんだけど……」


「………え?」


「初めまして!私はお兄ちゃんの妹のクレアです!」


 俺が妹と説明し、クレアが自己紹介することで、ようやく勘違いに気づくソラさん。


「〜〜〜っ!い、今のは忘れて!特にカミトくん!」


「お、おう。わ、忘れよう」


 顔を真っ赤にしたソラさんが落ち着くまで、しばらく時間を要しました。

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