第4話 鳥浪村
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私が都会から引っ越したのは、つい数週間ほど前のことである。梅雨が明けたばかりだった。太陽は一気に活力を取り戻したようで、運転中はこれでもかとばかりにクーラーをかけていた。軽自動車のほうは妻が運転しており、子どもは私の車両に乗っていた。妻の
車体が揺れる。下り坂になったようだ。助手席に乗った小学校高学年の息子は、さきほどからえらく静かだ。
「止まって」
唐突に、息子はそう言った。急ブレーキをかけたが、先程からゆっくりと走らせていたからか、事故にはならなかった。「どうした。あぶないじゃないか」
息子は若干
「この道で本当に合ってるの?」
「心配か? たしかに長い道のりだが、もうすぐ
妻から電話がかかってきた。おそらく、今のブレーキについて説明が欲しいのだろう。私は息子の行動をあらかた述べて、祐子を納得させたが、それでも時間の消費を考えると
やがて辺りが開けて、鳥浪村とそれを囲む山が見えてきた。
神秘的で青々とした健全たる木々に、夏の陽光が射し入る様子は言い表せぬほど美しかった。それに対して鳥浪村は
一番
だが、もしかすると息子は危険人物かもしれない。狂気によって得た、恐るべき洞察力がそう告げていた。
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