第4話 抱きたい、抱かれたい!

赤い傘を差して友達の家を去る。運動靴に雨水が染み込む。新しいので匂ったりはしないはず。男の身体になるにつれて体臭が気になった。香水を使うようになった。何もかも嫌になった時はシーブリーズで女の子が好みそうな香りを選んで部屋でゆっくりつける。スキンケアが父に見つかるといい顔をされない。しかし母は化粧水を顔につけるとジャニーズみたいね!と喜ぶ。ムスメという幻想が遠ざかる分、美し系に傾倒してくれればいいらしい。

また、夜が来た。

ベッドに身を投げ出し頭の後ろで腕を組んで考える。

「今日は告白したのにノーカンだった日」

そう呟いた。

男友達にLINEで「告白したけど脈なし」と送ったらいい奴で慰めてくれたり、ざまあ!とふざけて言ってくる奴もいた。どっちも大切にしよう。

みんな、「男」の貴重なサンプルだ。

いまさらこの体で女子の中に入っても、と考えて。

いや、アリか?と考える。

女子会に参加できる男子って、いるよな。ナヨナヨしてたり、イケメンだったり、デパコスに詳しかったり?

……もういいや。おとこで。とりあえず、おとこで。少女漫画とか読まないし、ファッション雑誌も買わないし興味ないし、ぬいぐるみは買わないし。

あとはー、あとなー、恋をまずしてもどっちの気持ちか結局わからない。

抱きたい!なら男か。抱かれたい!なら女か。でも男を好きになって抱かれたい!なら?女を好きになって抱かれたいなら?

アレ?

あれれ。

もう、眠ってしまおう。どのみち確かめようがないんだから。おれの身体じゃ。気持ちじゃ。

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